まずはじめに
※調査と探査の言葉
調査と探査に関しては、非接触でコンクリート内部の異物を探すという意味では「探査」と言う言葉がよく使われます。
「調査」・・・物事の実態・動向などを明確にするために調べること。「都市の言語生活を調査する」「国勢調査」「市場調査」「信用調査」
「探査」・・・未知の対象物を探ることをいうが,一般に離れた所から調べる意味合いで使われることが多く,宇宙探査,海洋探査,資源探査などのようにいう。
しかし、本記事では、調査という言葉のほうがわかりやすい・読みやすい方もおられることを考慮して、調査と探査の両方を使っております。
1.コンクリートの内部の調査
コンクリート構造物が増える現代、その内部検査の需要も増加しています。
中でもコンクリートを破壊せずに検査ができる非破壊検査の需要増加とそれに伴う性能向上には目覚ましいものがあります。
今回はそんなコンクリートの非破壊検査である「X線撮影法(レントゲン)」と「電磁波レーダー法」について紹介いたします。
2.X線撮影法とは
(1)概要
X線撮影法とは医療のレントゲン撮影と同じく、コンクリートに向かってX線を照射してコンクリート内部にある鉄筋や配管などを映し出す手法です。
密度の低いものは透過し、密度の高いものは透過しにくいというX線の性質を利用した方法で、精密な内部探査結果を得ることが可能です。
X線撮影法に使用されるX線も電磁波レーダー法に使用されるマイクロ波も電磁波です。
違いはその波長でX線は1pm~10nmという短い波長の電磁波を利用しています。
(2)メリット
X線撮影法のメリットは、精度の高い内部探査が可能という点です。
医療でのレントゲン写真を見てもわかるように、フィルムに透過された画像は鮮明でわかりやすいです。
また、探査可能な厚みも装置によって異なりますが、基本的には30cm程度まで(埋設のCD管を判別するには250mmぐらいまで、鉄筋や鉄製の電気配管を判別できるのが300mm程度までです)コンクリートの探査が可能です。
(3)デメリット
X線撮影法のデメリットは、放射線を扱うため作業には十分な知識を持った有資格者が必要という点です。
またX線照射装置とそれを受け取るフィルムが必要なため、X線照射装置を設置する面の反対側にフィルムを設置することが出来なければX線撮影法は使用できません。
(4)条件
X線撮影ができるための条件はメリット、デメリットの説明でも挙げましたが、
コンクリートの厚みが基本的には30cm未満であること、そして裏面にフィルムを張る必要があることです。
これが出来ない場所ではX線撮影法を使用することが出来ません。
3.電磁波レーダー法とは
(1)概要
電磁波レーダー法とは、コンクリート内にマイクロ波と呼ばれる電磁波を放射し、その反射波を受信してコンクリート内の鉄筋や空洞などの有無を確認する手法です。
マイクロ波はコンクリート内部に鉄筋や空洞などの違う物質が入っていると反射をするため、
マイクロ波の放射時間と反射波の受信時間を計測することで、鉄筋などの位置を計測することが出来ます。
電磁波レーダー法で使用するマイクロ波の波長は1mm~1m程です。
(2)メリット
電磁波レーダー法のメリットは、装置がハンディタイプで誰でも気軽に測定できることです。
ただし信頼度の高い計測結果を得るためには、基本的な原理や測定器の使用方法、また対象構造物の設計図などの情報を知っている必要があります。
しかし、画像による位置や深さは比較的精度が良いものの、その画像が鉄筋か電気配管かの識別は困難です。
鉄筋よりも浅いところに、鉄製の配管や太めの塩ビ配管等が埋設されている場合は容易に識別できます。
探査可能なかぶり厚さや、水平ピッチの分解能力は各メーカーの開発が年々進み、条件によってはかぶり厚さ300mm以上も可能ですが、鉄筋が密集している場合は精度が落ちます。
エックス線探査に比べ、立入禁止が不要であり、操作が簡便で測定を迅速に行えるため、広い範囲の配筋調査に、また、深い位置の探査も可能なので、橋脚やフーチング、梁の穿孔工事やアンカー打設工事前の鉄筋位置確認に有用といえます。
(3)デメリット
電磁レーダー法のデメリットは、X線撮影法に比べて精度が低いこと、最大30cmほどの深さまでしか計測できないことです。
また、内部の鉄筋間隔が近かったり、鉄筋が重なっていたりする場合には上手く測定できないこともあるため、注意が必要です。
(4)条件
電磁波レーダー法の条件はデメリットの説明でも挙げましたが、コンクリート表面から30cm程の深さまでしか探査できないことです。
4.まとめ
コンクリートの内部探査には種類があります。
コンクリート構造物の適切な工事を行うためには、状況に応じた適切な探査方法を選択することが重要です。
しかし、X線撮影法、電磁波レーダー法どちらも使用可能な状況であれば、X線撮影法の方がオススメです。
X線撮影法は有資格者が必要という条件はありますが、電磁波レーダー法よりもわかりやすく精密な結果が得られます。
非破壊検査は構造物の安全性を確認する上で重要な検査のため、精密な結果に越したことはないといえるでしょう。