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2020年の大気汚染防止法と石綿障害予防規則の改正 2

(4) 除去方法と作業基準の変更

石綿障害予防規則では、アスベストを含んだ建材の除去方法は、レベル1および2については作業場を隔離し、負圧下での作業を行うことが規定されており、レベル3については湿潤化が求められていました。一方、大気汚染防止法では、レベル1および2に関しては石綿障害予防規則と同様の規定がありますが、レベル3はこれまで規制の対象ではありませんでした。

今回の改正では、大気汚染防止法においてもレベル3を規制対象とし、除去方法も変更しました。レベル3の除去については、以前は湿潤化のみが法律で定められていましたが、改正により、石綿障害予防規則と大気汚染防止法の両方で、除去時に破砕せずに切断以外の方法を使用することが明示されました。また、レベル3の中でも、厚生労働大臣が指定している発じんしやすい材料については、切断などの方法で除去する際にビニールシートなどで隔離し、作業中は常に湿潤な状態に保つことが要求されます。発じんしやすい材料としては、ケイ酸カルシウム板第1種が指定されています。

さらに、建築用仕上げ塗材はこれまでレベル1として扱われていましたが、改正により、電動サンダーなどの電動工具を使用して除去する場合には、ケイ酸カルシウム板第1種と同じ対策が求められるようになりました。

(5) 除去作業の適切性の確認

アスベストを含む建材が完全に取り除かれずに解体工事が行われると、アスベストが飛散する可能性があります。完全に除去された状態を確認することは非常に重要です。以前は法的な義務はありませんでしたが、改正によって義務化されました。石綿障害予防規則の第6条第3項では、「石綿や石綿含有の保温材などの除去が完了したことを、石綿に関する知識を持った人物が確認するまで、隔離を解除してはならない」と規定されています。その「石綿に関する知識を持った人物」として、建築物石綿含有建材調査者や特定工事に関わる石綿作業責任者などが指定されています。

また、大気汚染防止法の施行規則第16条の4では、「特定の建築材料の除去、囲い込み、または封じ込めが完了した後、除去作業が完了したことを適切に確認するために必要な知識を持った人物による目視確認を行うこと」と規定されています。この確認には、建築物石綿含有建材調査者や特定工事に関わる石綿作業責任者などが必要とされています。

石綿障害予防規則ではレベル1および2の除去が対象とされていますが、大気汚染防止法では「特定の建築材料の除去」として、レベル3を含むすべての石綿含有建材の除去が対象となります。したがって、法規制の観点からは2つの法令にわずかな違いが存在しています。

(6) 作業の記録作成、保存、および発注者への報告

石綿障害予防規則の第35条の2は新たに導入され、事業者はアスベストを使用した建築物の解体などの作業を実施した際に、作業計画に従って行われたことを確認できる方法で写真やその他の実施状況を記録し、3年間保存する義務が課されました。一方、大気汚染防止法の施行規則第16条の4第3号では、元請業者、自主施工者、または下請負人による作業の実施状況の記録作成が求められており、保管期間は作業の終了までとなっています。元請業者は作業が適切に行われたことを確認しなければなりません。また、大気汚染防止法の第18条の23では新たに、元請業者は発注者に対して作業の結果を書面で報告し、作業に関する記録を作成して3年間保存する必要があります。

(7) 作業基準の違反に対する直接的な罰則

大気汚染防止法においては、罰則が強化され、第18条の19が新たに設けられました。これは、隔離などの中で行われるレベル1および2の除去作業に関する規定です。この規定に違反した場合、違反が確認された事実に基づき、懲役3ヶ月以下または罰金30万円以下の刑罰が科されます(第34条3号)

(8) 国および地方公共団体の施策

大気汚染防止法の第18条の24(国の施策)および25(地方公共団体の施策)が新たに導入されました。これは、最近頻発している地震や水害に備え、災害時におけるアスベストの飛散を防止するために、建物の所有者がアスベスト含有建材の使用状況を把握することを国や地方公共団体が支援することを目的としています。関連して、環境省では2020年から「石綿含有建材の使用状況の把握に関するモデル事業」を実施しており、主要な地方自治体ではアスベスト含有建材のデータベースの作成が進行中です。

まとめ

以上のように、2020年の法改正は非常に重要なものです。段階的に2023年10月まで施行され、規制が強化されていくため、関与する業者の方は対応する必要があります。建物の所有者や管理者も無関係ではありません。特に調査者による調査、一般の解体工事の届出、除去方法の厳格化などにより、除去作業の費用が増える可能性があります。前述したように、所有者や管理者の責任も重くなっています。以上のことを踏まえると、建物の購入から維持管理、増改築、解体までの間で、適切なアスベストの管理が求められる時代になってきているといえるでしょう。

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