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アスベスト分析の基準 石綿則に基づくマニュアルの分析法2

建築物の解体や改修工事において、アスベスト含有建材のリスク評価には含有率の正確な把握が不可欠です。

石綿則では、含有の有無を判定する定性分析に加え、質量分率を測定する定量分析が規定されており、特にレベル1・2建材の除去や封じ込め対策の策定に活用されます。

今回は、石綿則に基づく環境省通知「石綿含有建材の分析方法に関するマニュアル」に示された定量分析方法1(X線回折分析法)と方法2(偏光顕微鏡法)に焦点を当て、その手順や特徴を詳しく解説します。

定性分析と定量分析の違いとは

まず、定性分析は「アスベストが含まれているかどうか」を調べ、「ある・なし」を判定します。偏光顕微鏡法などで繊維や結晶を確認し、解体前のリスク把握に使います。

次に、定量分析は「アスベストが何%含まれているか」を測定します。ポイントカウント法などで含有率を計算し、除去方法の決定に必要です。

つまり、定性は「あるかないか」、定量は「どれだけあるか」です。通常は定性で「ある」と分かった後に定量を行います。

定量分析方法1 X線回折分析法の概要と手順

定量分析方法1のX線回折分析法は、「アスベストが含まれている」と判明している建材について、どれくらいの割合(%)でアスベストが入っているかを正確に測る方法です。

X線を当ててアスベスト特有の「結晶の模様」を調べ、その強さから含有率を計算します。

まず、ぎ酸処理という前処理を行います。これは、建材の中の石灰や樹脂などの邪魔な成分を溶かして取り除く作業です。アスベストは溶けにくいので残ります。

手順は以下の通りです。

  1. 建材の試料を100mg(0.1g)正確に量り取ります。
  2. 20%ぎ酸(弱い酸)と水を加え、1分間かき混ぜてから、30℃の温かい環境で12分間振ります。
  3. 特殊なフィルタでこして、残った固体(アスベストが主)を乾燥させ、重さを測ります。
  4. 同じ試料で3回繰り返して平均を取ります。

次に、X線回折装置で測定します。試料にX線を当てると、アスベストは特定の角度で強く反射します。

この反射の強さを、純粋なアスベストで作った基準グラフ(検量線)と比べます。基準は0.2〜1.0mgの純粋アスベストで作り、信頼性が高くなるように基準グラフとの相関が0.99以上になるまで調整します。

最後に、測定した反射の強さから、建材全体に占めるアスベストの割合(%)を計算します。

この方法は、建材の種類が複雑でも正確に測れるため、工事の計画や行政への報告に信頼性の高いデータとして使用されます。

定量分析方法2 偏光顕微鏡法の概要と手順

定量分析方法2の偏光顕微鏡法は、「アスベストが含まれている」と判明している建材について、顕微鏡でアスベストの繊維を数えて含有率(%)を求める方法です。

特に5%未満の少量のアスベストを正確に測るのに適しており、ポイントカウント法(特定の点にアスベストが重なるかを数える方法)を使います。

手順は以下の通りです。

  1. 試料0.5〜1.0gを正確に量り取り、450℃の電気炉で4時間以上加熱して有機物(樹脂など)を焼き飛ばす。
  2. 残った灰を2mol/L塩酸に入れ15分間振って、石灰などの溶ける成分を取り除く。
  3. 水を加えて浮いたアスベストを別の容器に移し、重い砂などは底に残す。(これを何度か繰り返す)
  4. 浮いた部分をフィルタでこして顕微鏡用のスライドを数枚作り、残りの重い部分は実体顕微鏡で大きなアスベストの束をピンセットで取り出して重さを計測する(M)
  5. 全体の残った固体の重さ(R)も記録する。

次に、偏光顕微鏡(100倍)でスライドを観察します。

フィルタを特殊な液体で透明にし、試料が全体的に均等に広がっているか確認します。

次に、試料の中で最も大きい粒子と最も太いアスベスト繊維のサイズを測ります。その大きさの10%以上の粒子と、20%以上の太さの繊維だけを数える対象にします。

顕微鏡の台を一定の間隔で動かし、十字線の中心にアスベストが重なったら「アスベストポイント(A)」、何らかの粒子が重なったら「何かあるポイント(N)」と記録します。

アスベスト繊維が20本見つかるか、または「残った固体の割合(%)×130」のポイントに達するまで数え続けます。最低でも2枚のスライドを使い、合計100ポイント以上は必ず数えます。

最後に、アスベストポイント(A)と全体のポイント(N)の割合、そして別に取り出したアスベストの重さ(M)と全体の残った固体(R)から、建材全体に含まれるアスベストの割合(%)を算出します。

この方法は、少量のアスベストを目で見て確実に数えるため、信頼性が高く、X線法と併用するとさらに精度が上がります。

まとめ

アスベストの定量分析は、含有率を正確に把握し、安全な工事と法令遵守を支える重要な手法です。

定量分析方法1 (X線回折分析法)
ぎ酸処理で不要成分を除去し、基底標準吸収補正法でX線吸収の影響を補正することで、複雑な建材でも高精度な含有率を測定できる。・定量分析方法2 (偏光顕微鏡法)
灰化・酸処理後のポイントカウントにより、特に5%未満の少量アスベストを確実に数え、信頼性の高い測定結果が得られる。

分析は、試料の前処理、機器校正、測定基準の徹底が精度を左右するため、専門的な知識と丁寧な手順が不可欠です。

これらの分析を正しく運用することで、建築現場におけるリスク管理と法令対応に確かなデータを提供できるようになります。
Asbestos analysis standards method manual

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