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アスベスト対策:集じん・排気装置の使用方法

アスベストはその優れた特性から広く使用されてきましたが、健康被害が深刻であり、現在では厳しく規制されています。特に建物の解体や改修時には、アスベストの飛散を防ぐことが重要です。そのためには、集じん・排気装置を適切に使用する必要があります。

今回は、アスベスト対策としての集じん・排気装置の使用方法について、具体的な手順や注意点を詳しく解説します。安全で効果的なアスベスト処理を実現するためのポイントを理解していただければ幸いです。

集じん・排気装置の取扱い

集じん・排気装置の不備や不適切な使用により、アスベストが飛散する事故が発生することがあります。原因としては、以下のような内容が考えられます。

1)集じん・排気装置本体に隙間がある
2)フィルタの装着を忘れている
3)フィルタが正しく装着されていない(異物が挟まっている、フィルタがしっかり固定されていない、フィルタと本体の間に隙間があるなど)

それぞれの集じん・排気装置について、点検整備記録やフィルタ交換記録をきちんと管理し、記録を装置に備え付けておくことが重要です。

1. 使用前の整備点検

集じん・排気装置は、使用前に整備点検を行います。点検方法は以下の通りです。

【パーティクルカウンターによる集じん・排気装置の点検方法例】

パーティクルカウンターとは

空気中や液体中に存在する微小な粒子(パーティクル)を検出し、数をカウントする装置です。主に、クリーンルームや製薬工場などで使用され、空気や液体の清浄度を管理するために利用されています。

1. 測定孔の設置
集じん・排気装置に接続されたビニールダクトの接続口から約150cm(接続口直径の5倍)離れた位置に測定孔を設けます。排気風速を考慮して、ダクト内の排気を直接、または導電性シリコンチューブを使って取り込み、パーティクルカウンターを接続します。吸気側はHEPAフィルタ面中央から約25cm離れたところに設置します。

2. 粉じん個数の計測
集じん・排気装置の吸気側で0.3µmの粉じん個数を1分間計測します。次に、集じん・排気装置を稼働させ、排気側で同じく0.3µmの粉じん個数を1分間計測します。これを5回繰り返し、それぞれの平均値を求めます。0.3µmの捕集効率は、以下の計算式で求めます。

捕集効率(%) = ((吸気側計数値 - 排気側計数値) / 吸気側計数値) × 100

3. 捕集効率の確認
捕集効率がHEPAフィルタの基準である99.97%を下回った場合、本体などの漏えいテストの記録を再確認し、HEPAフィルタが確実に設置されているかを確認します。

4. 計測手順の注意
パーティクルカウンターが1台しかない場合、吸気側の計測後、速やかに排気側の計測を行い、捕集効率を求めます。

【スモークテスターによる集じん・排気装置の点検方法例】
集じん・排気装置では、漏れが発生しやすい箇所として、HEPAフィルタ周辺以外にも、コントロールパネルの接合部、スイッチの取り付け部、電源コードの取り付け部、ダクト接続口、装置本体の各部におけるネジやリベット止め部、本体下部のキャスター取り付け部などがあります。

そういった場所にはスモークテスターを使用して、目視で吸い込みがないか確認します。もし吸い込みが確認された場所があれば、コーキング処理などの漏えい防止対策を行います。

2. 搬入

使用する集じん・排気装置は、装置に添付されている整備点検表により、点検および漏えいテストの実施が確認されているものを使用します。集じん・排気装置は、運搬および搬入時に装置本体の形状が変わらないように丁重に取り扱います。

レンタル業者からの装置を使用する場合は、装置の性能が保証されているものを選定します。他の作業で使用済みの集じん・排気装置を作業場に搬入する際には、吸入口と排気口を密封して養生し、装置全体を梱包材で保護してアスベストの飛散や装置の損傷を防止します。

搬入後、作業場まで運搬した集じん・排気装置は梱包を解いた後、設置時に装置本体が変形しないように注意深く取り扱いましょう。

3. 稼働開始前点検

集じん・排気装置を稼働させる前に、以下の手順を実施します。

1. 各集じん・排気装置の備え付けた点検整備記録およびフィルタ交換記録を確認します。
2. 集じん・排気装置本体における隙間の有無、フィルタの装着忘れ、装着不良などを確認します。
3. 点検整備記録に基づき、漏えいテストの実施を確認し、フィルタ交換記録に基づきフィルタの交換状況を確認します。

集じん・排気装置の作業開始前点検方法については、以下のコラムを参照してください。

コラム:アスベスト対策:集じん・排気装置設置時の点検手順

また、集じん・排気装置を作業場内に設置する際には、装置にアスベストが付着しないよう、事前に養生用プラスチックシートなどで装置を覆います。

吸引ダクト及び排気ダクトの取付け・配置

集じん・排気装置を作業場内に設置する際、通常は吸引ダクトは不要です。ただし、集じん・排気装置を負圧隔離養生ライン上に設置する場合や外部に設置する場合は、吸引ダクトが必要になります。

吸引ダクトの先端位置は、セキュリティゾーンの出入り口から最も遠い位置に設置しますが、配管距離が長くなると集じん・排気装置の排気能力が低下することに注意が必要です。吸引ダクトには、型崩れがない剛性の高い蛇腹式風管が一般的に使用されています。

ちなみに吸引ダクトはアスベストが付着する可能性があるため、一度使用したら使い捨てます。

排気ダクトは通常、建築物の外部と外気が接する位置に設置して必要な長さを確保します。過去には、排気ダクトの近くに解体廃材が放置されていて、排気によって解体廃材に付着したアスベストが屋外に飛散する事例がありました。そのため、解体廃材はしっかりと管理したうえで、排気ダクトの位置にも十分に注意しましょう。

排気ダクトには通常、プラスチック製またはアルミニウム製の既製品が使用されています。プラスチック製のダクトを使用する場合、集じん・排気装置が稼働している間に排気口の先端を縛りつけてはいけません。そのような事をすると排気量が減少し、必要な排気量が確保できなくなる恐れがあるためです。

縛り付ける必要がある場合は、頑丈なアルミ製の排気ダクトを使用しましょう。また、ビニールダクトは曲がり部分で断面が崩れることがありますので、アルミ製のダクトで補強する必要があります。ダクトをひもで吊るして支えると、折れ曲がって吸引風量が低下し、十分な排気ができない場合があるため、アルミ製のダクトなどの幅広の環状支えを使用して、折れ曲がらないようにします。

ダクトが隔離シートを貫通する部分では、汚染された空気が作業場外に漏れないように、貫通孔周りをしっかり密封しましょう。

作業が複数日にわたって連続して行われる場合、作業終了後に集じん・排気装置を停止する必要があるかと思います。その場合、ビニールダクトの排気口から外部の風がダクト内に吹き込んだり、風が逆流して作業室内が加圧される可能性があります。対策として、排気口の先端部分をプラスチックシートなどで塞いでおくと良いでしょう。

まとめ

アスベスト対策における集じん・排気装置の使用は、アスベストの飛散を防ぐために極めて重要です。装置の適切な点検、整備を定期的に行い、漏えいや機能の確認を徹底することが必須です。

また、作業前後でのダクトの適切な管理や密閉も不可欠です。これらの対策を実施することで、安全な作業環境を確保し、健康リスクを最小限に抑えることが可能になるでしょう。

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