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アスベスト対策:集じん・排気装置設置時の点検手順

アスベストは、その優れた耐熱性や絶縁性から、長年にわたり建材や工業製品に広く使用されてきました。しかし、アスベストの繊維を吸引することによる健康被害が明らかになり、現在ではその使用が厳しく規制されています。

特に建物の解体や改修作業においては、アスベストの飛散を防ぐための厳重な対策が求められます。その中で、集じん・排気装置の適切な設置と運用は、作業者の安全を確保し、周囲への影響を最小限に抑えるために不可欠です。

今回は、アスベスト対策の一環として行う集じん・排気装置の設置時に必要な点検手順について詳しく解説します。集じん・排気装置を設置した際には、以下の手順に沿って点検を行い、点検結果は、設置時の点検記録に記録しましょう。

手順1

1. ビニールダクトの固定

集じん・排気装置を作業場に設置した後、排気口から2〜3メートル程度のビニールダクトを取り付けます。ビニールダクトの先端を60センチメートル程度のアルミ製ダクトに通し、ビニールダクトの先端を5〜10センチメートル程度アルミ製ダクトの外側に折り返して、養生テープなどでしっかりと固定します。

※ 集じん・排気装置からビニールダクトを取り付ける際には、隔離シートに排気ダクト貫通用パネルを使用すると便利です。

2. 粉じん濃度の測定

アルミ製ダクトの先端から集じん・排気装置の方向に40センチメートル程度の位置で、静電気による粉じんの付着を防ぐための導電性シリコンチューブを使用して、吸引ポンプ内蔵の粉じん相対濃度計(デジタル粉じん計)またはパーティクルカウンターを連結、あるいは直接ダクト内に挿入して、排気中の粉じん濃度を測定します。

※ 設置時の点検にはスモークテスターの煙を使用するため、繊維状粒子自動測定器(リアルタイムファイバーモニターなど)は使用できないので、注意が必要です。

※パーティクルカウンターとは

空気中や液体中に存在する微小な粒子(パーティクル)を検出し、数をカウントする装置です。主に、クリーンルームや製薬工場などで使用され、空気や液体の清浄度を管理するために利用されています。

3. 初期濃度の測定

集じん・排気装置を停止した状態で10分間、粉じん濃度を測定し、その数値を確認します。このときの粉じん濃度を「初期濃度」といいます。

4. 稼働後の濃度測定

粉じん濃度の測定を続けたまま集じん・排気装置を稼働させ、稼働開始から10分後の粉じん濃度を記録します。これにより、初期濃度からの粉じん濃度の減少を確認します。

5. 濃度の安定確認

正常に稼働している場合、粉じん相対濃度計(デジタル粉じん計)やパーティクルカウンターが示す粉じん濃度は徐々に減少し、安定した状態になります。

6. 漏えい確認用基準濃度の設定

安定した状態の粉じん濃度を「漏えい確認用基準濃度」といいます。周囲の風などの影響で排気ダクト内に若干の粉じんが入り込むことがありますが、開始直後の濃度から減少し、安定していれば問題ありません。

7. 異常時の点検

粉じん濃度が減少しない場合、集じん・排気装置のHEPAフィルターの破損や取り付け部のネジの緩みなどの原因が考えられます。スモークテスターを使って点検し、問題箇所を特定して対応を行います。その後、再度粉じん濃度の減少を確認しましょう。

8. 改善されない場合の対応

漏えい箇所が特定できない、または修理しても改善されない場合、その集じん・排気装置は使用不可と判断することになります。

手順2

1. 装置周辺の確認

粉じん濃度の減少が正常であると確認された場合、スモークテスターを使用して集じん・排気装置の吸引口や装置周辺を点検します。具体的には、コントロールパネルの接合部、スイッチ、電源コードの取り付け部、ダクト接続口、装置本体のネジやリベット止め部分、キャスター取り付け部分などに煙を吹き付け、その際の粉じん相対濃度計(デジタル粉じん計)やパーティクルカウンターの濃度が上昇しないことを確認します。

2. 安定した状態の確認

粉じん相対濃度計(デジタル粉じん計)やパーティクルカウンターの濃度が減衰した「漏えい確認用基準濃度」の状態で安定しているか確認します。周囲の風などの影響でわずかな濃度上昇が見られることがありますが、スモークテスターの煙に反応して粉じん濃度が上昇しなければ、集じん・排気装置は正常に機能していると判断できます。

3.漏えい箇所の特定

「漏えい確認用基準濃度」と比較して粉じん濃度が上昇し、「初期濃度」を超えた場合、再度スモークテスターの煙を使用して、漏えいが疑われる箇所に吹き付け、具体的な漏えい箇所を特定します。

4.漏えい箇所の補修

特定した漏えい箇所を養生テープやコーキング剤などで修理します。その後、修理した箇所に再度スモークテスターの煙を吹き付け、粉じん相対濃度計(デジタル粉じん計)やパーティクルカウンターによる粉じん濃度の上昇が見られないことを確認できれば、集じん・排気装置は正常な状態に戻ったと判断します。

5.漏えい箇所が発見できない場合

漏えい箇所が見つからない場合、その集じん・排気装置は使用しないでください。

※ 作業室内で集じん・排気装置を移動させた場合には、スモークテスターを使用して手順1・2の点検を再度行い、漏えいの有無を必ず確認してください。

まとめ

アスベスト対策における集じん・排気装置の設置時の点検手順は、装置の正確な機能確認が肝要です。定期的な点検と整備を通じて、装置の漏えいや不具合を事前に防ぎましょう。正しい点検手順により、作業環境における安全性を確保し、作業者の健康を守ることができます。

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