アスベスト取り扱い業務の作業記録
【引用】
石綿障害予防規則
(作業の記録)第35条
事業者は、石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等の製造に伴い石綿等の粉じんを発散する場所において常時作業に従事する労働者について、一月を超えない期間ごとに次の事項を記録し、これを当該労働者が当該事業場において常時当該作業に従事しないこととなった日から四十年間保存するものとする。(以下略)(作業計画による作業の記録)第35条の2
事業者は、石綿使用建築物等解体等作業を行ったときは、当該石綿使用建築物等解体等作業に係る第四条第一項の作業計画に従って石綿使用建築物等解体等作業を行わせたことについて、写真その他実施状況を確認できる方法により記録を作成するとともに、次の事項を記録し、これらを当該石綿使用建築物等解体等作業を終了した日から三年間保存するものとする。(以下略)
1.作業記録の内容
第35条では、アスベストの製造、または取り扱いが行われる作業場において、その作業に携わる労働者に対し、作業の履歴や事故による汚染の概要を記録することが規定されています。
この記録を保存することで、第36条の作業環境測定結果の記録、第37条の作業環境測定結果の評価の記録、および第41条の健康診断結果の記録と結びつけて、アスベストばく露状況の把握や、健康管理に寄与することができます。
この記録の保存期間は、アスベスト疾患の潜伏期間が長期であることを考慮して、当該労働者が作業に携わらなくなった日から40年もの間、保存しておくことが規定されています。
2.記録の方法
事前調査・分析調査結果の記録は、所轄の労働基準監督署に報告した事前調査結果のコピーを保存しておけば問題ありません。
記録の概要(作業の実施状況の写真など)は、写真と共に作業の進捗などを簡潔な文章で保存しておけば大丈夫です。
周辺作業従事者に関する保護具の使用状況については、労働者が保護具を使用している状況を簡単に記録しておくとよいでしょう。
また、記録に残すように規定されている「著しく汚染される事態」について例を挙げると、設備の故障によりアスベスト粉じんを大量に吸入した場合などが該当します。
事態の概要については、ばく露期間、濃度などの汚染の程度、汚染によって引き起こされた健康障害などを記録しておく必要があります。
3.作業計画に基づく作業記録
第35条の2で規定されている作業計画に基づく作業記録について解説します。
過去に、解体作業で事前調査が適切に行われていなかった事例がありました。その一方で、解体工事や改修工事は、終了後では行政機関が適切な措置が実施されていたのかを確認することが難しいという課題がありました。
そのため、工事の終了後も措置内容を確認できるように、第35条の2では作業計画に基づいた作業が行われていたのかどうかを、写真や実施状況の記録で保存することを規定しています。
写真や実施状況の記録は、石綿障害予防規則で規定されている措置の実施状況に関するもので、以下に挙げる項目が含まれます。
1)作業場の表示状態の記録
事前調査などが実施された箇所において、アスベストの使用の有無に関する概要に関する表示。
非関係者の立ち入り禁止のサイン、禁煙・禁食のサイン、および次に挙げる項目(ア〜エ)の表示が行われたか確認できるような記録。
(イ) アスベストの人体に及ぼす作用
(ウ) アスベストの取扱い上の注意事項
(エ) 使用すべき保護具
2)装置や設備・点検結果などの記録
隔離の状態、集じん・排気装置の設置状況、前室・洗身室・更衣室の設置状況、集じん・排気装置の排気口からのアスベスト粉じんの漏れがないかの点検結果、前室の負圧に関する点検結果、隔離を解除する前に除去が完了したことを確認するための措置が実施されたかどうか、その確認を行った者の資格が確認できる記録。
3)作業方法・粉じん対策などの記録
作業計画に示された手順に基づき、同計画に記載された作業の方法、アスベストの粉じんの発散を防止または抑制する方法、および労働者へのアスベスト粉じんのばく露を防ぐ措置が実行されたことを確認できる記録。
この記録には、湿潤な状態を保つための措置の実施状況や、呼吸用保護具の使用状況に関する規定が含まれます。同様の作業を行う場合でも、作業が行われる部屋や階が変わるたびに記録を残す必要があります。
4)アスベストの取り扱い方法の記録
除去を行ったあとのアスベストの運搬・貯蔵時の容器や包装、それらの表示、および保管状況が確認できる記録。
4.記録の注意点
実施状況を確認できる記録手段に関しては、写真の撮影場所や日時などが特定できるように記録する必要があります。また、動画で記録することも認められています。
5.まとめ
今回はアスベスト取り扱い業務の作業記録について解説していきました。
主な内容としては、
作業に携わる労働者の作業履歴や事故による汚染の概要
2.記録の方法
各調査の結果はコピーを保存する。
作業の実施状況や保護具の使用状況などは写真や簡単な文章で残しておく。
著しく汚染される事態は、ばく露期間、濃度などの汚染の程度、健康障害の記録を取る。
3.作業計画に基づく作業記録
記録する内容は以下の4つ
1)作業場の表示状態
2)装置や設備・点検結果
3)作業方法・粉じん対策
4)アスベストの取り扱い方法
4.記録の注意点
写真は撮影場所や日時なども記録する。
動画で記録することも認められている。
作業の記録は事前調査や工事が適正に行われていたことの証明となります。
規定されている記録内容に漏れがないよう、よく確認して保存しておきましょう。