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アスベスト除去作業に関する基礎知識1

アスベスト除去作業に使用されている専門用語について解説していきます。

事前調査

建築物や船舶を解体する前には、その建物や船舶に、アスベストを含有する建材が使用されているかどうかを調査する必要があります。この調査は、一般的には書面による調査と、現地での目視調査の両方を行う必要があります。建材にアスベストが含まれているか判断できない場合には、建材の採取や分析を行い、石綿含有の有無を確認する必要があります。このような分析に基づく調査を「分析調査」と呼びます。書面調査、現地での目視調査、そして分析調査を組み合わせて「事前調査」と呼んでいます。
事前調査を適切に行うためには、適切な知識を持った「建築物石綿含有建材調査者」が実施する必要があります。「建築物石綿含有建材調査者」の詳細については、以下のコラムを参照してください。

リンク:石綿関係の資格一覧

作業場

アスベスト除去などの作業を行う地域や場所は、「作業場」として大気汚染防止法によって定義され、石綿障害予防規則では「作業場所」と呼ばれています。隔離が必要な場合は、隔離すべき範囲となります。

隔離

「隔離」とは、他の場所から離して区切ることを意味し、大気汚染防止法や石綿障害予防規則でも、アスベストの飛散を防ぐための措置として「隔離」という用語が使用されています。ただし、同じ「隔離」でも、除去する建材の種類や切断の有無によって、必要な措置の内容は異なります。隔離による飛散防止措置には、負圧化を行うものと負圧化を行わないものがあります。

セキュリティゾーン

「セキュリティゾーン」とは、アスベストが作業場外に漏洩することを防ぐために、隔離空間の出入口に設けられるもので、作業員の出入りや資機材や廃棄物の搬出入に関する場所です。通常、更衣室、洗面室、前室の3つの部屋が連続して配置されています。

施工区画

「施工区画」とは、アスベストの除去等工事に直接的または間接的に関係する区画であり、作業場やセキュリティゾーン、廃棄物保管場所、資機材置場などが含まれます。石綿障害予防規則では、石綿を取り扱う作業場は関係者以外の立ち入りを禁止しており、石綿含有建材の除去等工事に際しては、施工区画に立ち入りを禁止する必要があります。

負圧化

隔離空間やセキュリティゾーン内部の気圧を外部の気圧よりも下げ、隔離空間やセキュリティゾーンから外部への気の漏れを防ぐことを、「負圧に保つ」といいます。大気汚染防止法や石綿障害予防規則でも同様に言及されており、一般的には「負圧化」と呼ばれています。

HEPA (ヘパ) フィルタ

「HEPA (ヘパ) フィルタ」とは、「High Efficiency Particulate Air Filter」の略称です。日本産業規格(JIS)Z8122に規定された性能基準を満たし、粒径0.3マイクロメートルの粒子に対して99.97%以上の捕集率を有するエアフィルターです。主に集じん・排気装置や掃除機などに用いられています。

集じん・排気装置

集じん装置と排風機で構成される機器であり、隔離空間内に設置され、隔離空間およびセキュリティゾーンを負圧化して、作業中に発生するアスベスト粉塵をろ過捕集し、清浄な空気を排出します。
大気汚染防止法や石綿技術指針では、石綿含有吹き付け材等を除去する場合には、HEPAフィルタを備えた集じん排気装置を使用することが求められています。集じん装置のフィルタ部分には、目詰まりを防止するための1次フィルタ、2次フィルタ、そしてHEPAフィルタが一般的に使用されています。

負圧隔離養生

大気汚染防止法・石綿障害予防規則において、石綿含有建材を切断・破砕する際には、「作業場の隔離」「集じん・排気装置・セキュリティゾーンの設置」「隔離空間の負圧化」が義務付けられています。一般的にこれらの措置を「負圧隔離養生」と呼びます。この措置には漏洩や負圧の確認が必要であり、石綿技術指針では、負圧化に耐えうるシートを用いて隔離することが規定されています。このシートを「隔離シート」と呼び、密閉された空間は「隔離空間」といいます。
なお、大気汚染防止法や石綿障害予防規則では、「負圧隔離養生」という用語は使われていません。大気汚染防止法では、「特定の建築材料の除去を行う場所を他の場所から隔離し、作業場と前室を負圧に保ち、HEPAフィルタを付けた集じん・排気装置を使用すること」と規定しており、石綿障害予防規則では、「石綿を含む材料の除去を行う作業場所を他の場所から隔離し、集じん・排気装置を設置して、出入り口に前室、洗身室、更衣室を設置し、作業場所と前室を負圧に保つこと」と規定しています。

隔離養生 (負圧不要)

石綿の粉じんが発散しやすい建材を切断する場合において、大気汚染防止法では「周辺を事前に養生する」と規定していますが、石綿障害予防規則では、「当該作業を行う作業場所を当該作業以外の作業を行う作業場所からビニールシート等で隔離する」と規定しています。この石綿障害予防規則でいう隔離は、負圧化までは必要としていません。除去作業で発生したアスベストの飛散による曝露を防ぐことが目的であり、大気汚染防止法が求めている「養生」と同様の意味を持ちます。これらの措置については一般的に「隔離養生(負圧不要)」と表現されています。
隔離養生(負圧不要)は、作業場から周辺にアスベストを含む粉じんや塊の飛散・散乱を防ぐ措置です。室内ではプラスチックシートなどで開口部を覆う措置を、室外では建築物などの外周をシートやパネルで覆う措置を実施します。養生するシートの材質や厚みに規定はありませんが、十分な厚みがあり、簡単に破れないシートを使用する必要があります。また、養生はシート状のものだけでなく、鋼板やパネルなどを使用することもできますが、アスベストを含む粉じんを作業場から周囲に飛散させないように、ある程度の密閉性を確保する必要があります。

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