創意工夫と確かな技術で未来につなげる

施工後のコンクリート検査に必須!コアボーリングで分かること

建物が完成した後でも、その構造や材料の状態を正確に把握しなければならない場面があります。たとえば、経年劣化の調査、改修計画を立てるための診断、あるいは品質の再確認など、

そのような時に欠かせないのが、「コアボーリングによるコンクリート検査」です。

一般的にコアボーリングは、電気配線や配管用の貫通孔をあけるための工法として知られていますが、実は検査・診断を目的とした施工方法としても広く活用されています。

今回は、コンクリート検査のためのコアボーリングに焦点を当て、どんなときに必要になるのか、どのような情報が得られるのかを分かりやすく解説していきます。

 

  スリーブとコア抜きの違いとは?
後施工で必要になる理由

建物に配管や配線を通すための「貫通孔」は、本来、建設時にあらかじめ設けておくのが理想です。このような貫通孔は「スリーブ」と呼ばれ、コンクリートを打設する前に、所定の位置に管を設置して成形します。

スリーブは構造計算に基づいて計画的に配置されており、補強用の鉄筋を組み合わせることで、建物の強度にも配慮されています。

一方、建物が完成した後に新たに配管や配線が必要になった場合は、「コア抜き(コアボーリング)」という工法で対応します。

コア抜きは、空調設備や電気配線の追加、水回りのリフォームなど、後から発生する設計変更や追加工事に柔軟に対応できる方法です。

ただし、完成済みのコンクリートに穴を開けるため、スリーブとは違い、施工には強度を保つために慎重な判断と高い技術力が求められます。

また、見落とされがちですが、「コア抜き」はコンクリートの検査や調査を目的として行われることもあります。建物の耐久性や安全性を確認するために、コンクリートの一部を採取し、さまざまな試験を実施するケースも増えてきています。

 

  検査目的で行うコアボーリングとは?
供試体の採取方法

一般的なコアボーリングは貫通孔を作るために行いますが、検査・調査を目的とする場合は、貫通させないで一部を採取する方法が用いられます。

このような目的で採取されるコンクリートの円柱形の試験体は、「供試体(テストピース)」と呼ばれ、硬化コンクリートの性状を調べるために使用されます。

採取の際は、コンクリートをすべて貫通させるのではなく、深さ20cm程度でボーリングを止め、機械を引き抜いてコンクリートを採取する方法が一般的です。採取した供試体は、各種試験により強度や劣化状態を評価するための大切なサンプルとなります。

なお、コアボーリングを行う際には、鉄筋を傷つけないよう事前に鉄筋探査やX線調査などで内部状況を確認する必要があります。この手順を踏むことで、構造体としての安全性を確保しながら検査用コアを正確に採取できます。

 

  コンクリート検査で何がわかる?
主な試験内容

供試体を使った検査では、コンクリートの現在の状態や将来的な耐久性を客観的に評価することができます。ここでは、建物の健全性を確認するためによく行われる検査項目をいくつかご紹介します。

まず代表的なのが、圧縮強度に関する試験です。これは、建物に加わる重さや力に対して、どれだけコンクリートが耐えられるかを調べるもので、構造全体の信頼性を左右します。

次に挙げられるのが、引張や曲げといった、異なる方向からの力に対する強さを測定する試験です。コンクリートは圧縮には強いものの、引っ張りや曲げには比較的弱いため、これらのデータも重要な指標となります。

また、鉄筋との接着の強さや、繰り返しの荷重に耐える性質(疲労耐性)を確認する検査もあります。これらの試験によって、目に見えない内部の状態や劣化の進行度が把握でき、補修の必要性やタイミングを見極めることが可能になります。

さらに、コンクリートの中性化がどの程度進んでいるかを調べる試験もあります。これは、コンクリート内部に埋め込まれた鉄筋が錆びやすくなっていないかを確認するためのもので、建物の長寿命化に向けた重要な検査のひとつです。

このように、さまざまな視点から状態を確認することで、「今すぐ補修が必要かどうか」「あと何年もつのか」といった判断の裏付けを得ることができます。

 

  検査後の補修も忘れずに!
コア抜き後の処理の流れ

コアボーリングによって供試体を採取した後は、円筒形の穴が建物の構造体に残ることになります。このまま放置すれば、雨水の浸入や劣化の進行、構造強度の低下を招くおそれがあるため、適切な補修作業が不可欠です。

補修の基本的な流れは以下の通りです。

1.穴の清掃
コア抜きで生じた削りかすや水分を取り除き、接着力が確保できるよう清掃します。
2.モルタルまたは補修用コンクリートの充填
円筒形の穴に専用の材料を充填し、しっかりと密着させて埋め戻します。構造的な強度が求められる場合は、鉄筋の補強や特殊材料を使用することもあります。
3.仕上げ処理
表面を平滑に仕上げ、周囲と違和感のないよう整えます。必要に応じて塗装や防水処理も施します。

検査のためとはいえ、構造体に手を加える以上、施工前と変わらない強度と美観を確保することが大切です。信頼できる業者に依頼し、丁寧な補修を行うことで、安全性と品質を保つことができます。

 

まとめ

コアボーリングは、単なる穴あけ工事ではなく、建物の健康診断とも言える重要な検査手法です。

完成後のコンクリートから供試体を採取し、各種試験によって構造の安全性や劣化の状況を評価することで、適切な補修や改修の判断材料を得ることができます。

建物の寿命を延ばし、安全に使用し続けるためには、目に見えない部分にもしっかりと目を向ける姿勢が求められます。

もし「この建物、ちゃんとした状態なのか?」と不安を感じることがあれば、コアボーリングによる検査を検討してみてはいかがでしょうか。

 

  • B!