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知っておくべき!ダイヤモンドコア抜きの「湿式と乾式」の使い分け

コア抜きは、既に完成した建物の構造部分(壁、床、梁、柱)に後から穴を開ける作業です。そのコア抜きには湿式と乾式があり、用途に応じて使い分ける必要があります。

今回は、ダイヤモンドコア抜きの湿式と乾式の使い分けについて解説していきます。

コア抜きが必要な理由

建物の建設時には、あらかじめ配管や配線を通すために「スリーブ」と呼ばれる穴を開けておきます。そのスリーブを施工する際、コンクリート打ち込み前に専用の管を設置してからコンクリートを流し込みます。するとコンクリートが硬化した段階で、管を取り外すことで穴が開き、スリーブが出来上がるという仕組みです。

しかし上記とは別に、建物のリフォームや改修工事の際や、スリーブの設置が漏れていた場合は、後からコンクリートに穴を開ける必要があります。そこで、コア抜きによって穴を開けることが必要になるわけです。コア抜きの主な用途としては、配管や配線の追加工事、または耐震診断のサンプル採取などが挙げられます。

乾式と湿式のコア抜きの違い

ダイヤモンドコアドリルを使用したコア抜き作業には、大きく分けて「乾式穿孔」と「湿式穿孔」という2つの方法があります。ここでは、両者の違いについて解説していきます。

乾式穿孔について

乾式穿孔とは、コア抜き作業を行う際に水を使わず、ハンマードリルや専用のコアドリルにコンクリート専用のキリ(ビット)を装着して穴を開ける方法です。この方法は、特に水を使用できない場所や環境で効果的です。

乾式穿孔の主な特徴

メリット

水が使えない環境でも作業が可能
室内や地下室、電気設備周辺など、水を使うことができない場所での作業に適しています。例えば、オフィスビルやマンション内で水漏れのリスクを避けたい場合に最適です。

手軽に実施できる
乾式穿孔は湿式に比べ、機材の設置がシンプルで迅速に準備できます。特に、短時間で終わらせたい小規模な作業に向いています。

水処理が不要
湿式のように、汚水の処理や周囲への養生が不要なため、後片付けが比較的楽です。

デメリット

粉塵が大量に発生する
水を使用しないため、作業中に大量の粉塵が舞い上がります。これにより、作業環境が悪化し、作業者には防塵マスクや防塵ゴーグルなどの防護具が必須となります。また、粉塵の飛散を防ぐための養生作業も必要です。

ドリルの消耗が早い
乾式では摩擦熱が直接ドリルに伝わるため、ダイヤモンドビットの消耗が早くなります。特に長時間作業を続けると、ビットの交換が頻繁に必要になることがあります。

鉄筋に当たると時間がかかる
乾式穿孔では、鉄筋に当たると削りにくく、貫通するまでにかなりの時間がかかります。鉄筋を避けて作業するか、別の機材で補助する必要があります。

穿孔面が崩れる可能性がある
乾式では打撃を加えながらコンクリートに穴を開けるため、貫通時にコンクリート面が崩れてしまうことがあり、仕上がりの見栄えに影響を及ぼします。

乾式穿孔が適しているシーン

水を使うことが難しい現場
小規模で短時間の作業
後片付けを最小限に抑えたい場合

湿式穿孔ついて

湿式穿孔とは、先端にダイヤモンドビットを装着した専用のコアドリル(穿孔機)を使用し、水を流しながらコンクリートに穴を開ける方法です。水を使用することで摩擦熱を冷却し、粉塵の飛散を抑えると同時に、ドリルの寿命を延ばすことができるため、より精度の高い穿孔が可能です。

湿式穿孔の主な特徴

メリット

高精度な穴あけが可能
湿式ではダイヤモンドビットがスムーズにコンクリートを切削するため、精度の高い穴を開けることができます。穿孔面は滑らかで、崩れや凹凸が少なく、補修の必要がほとんどありません。

粉塵の発生を抑えられる
作業中に水を使用することで、コンクリート粉塵が飛散するのを防ぐことができます。これは、特に室内や密閉された空間での作業時に、周囲の環境を守るうえで大きな利点です。

鉄筋にも対応できる
湿式ではダイヤモンドビットが鉄筋にも容易に対応できるため、鉄筋が多い構造物でもスムーズに穴を開けることが可能です。鉄筋に当たった場合でも、乾式と比べて作業時間が大幅に短縮されます。

ドリルの寿命が長い
水による冷却効果により、ドリルの摩耗が抑えられ、ビットの寿命が延びます。特に大規模な現場や長時間の作業では、ビットの交換頻度が減り、コスト削減につながります。

深い穴も開けられる
湿式穿孔では、延長ロッドを使用することで、深さのある穴を正確に開けることができます。これにより、特殊な要求にも柔軟に対応できます。

デメリット

機材が高価である
湿式穿孔に使用するコアドリルは専用の機械で、価格が高めです。また、取扱いには一定の技術が必要なため、熟練した作業員が必要です。

汚水処理が必要
作業中に使用した水が汚水となるため、これを適切に処理する必要があります。現場によっては、汚水の飛散を防ぐために養生シートを使用したり、汚水回収のための設備を準備する必要があります。

電気機器への注意が必要
湿式では水を使用するため、電気設備の周辺で作業を行う際には、水が電気機器に接触しないよう特に注意が必要です。万が一、水が漏れてしまうと、機器に重大なダメージを与える危険があります。

湿式穿孔が適しているシーン

・高精度な穴開けが求められる場合
・大規模な現場や長時間作業
・鉄筋が多く含まれるコンクリート構造物

乾式穿孔と湿式穿孔はそれぞれ異なる特徴を持っており、現場の条件や目的に応じて使い分けが必要です。

まとめ

コア抜きの乾式と湿式には、それぞれ利点がありますが、総合的に見ると、湿式穿孔のほうが利点が多く優秀な工法だと言えます。

湿式穿孔は専用機器のコストが高いことや、取り扱いに技術が必要な点が課題ですが、逆にそれらを解決できるのであれば、湿式穿孔を採用した方がよいでしょう。仕上がりに補修が不要なことや、延長ロッドを使用することで深い穴も掘削できるため、多くの現場で成果を挙げています。

都築ダイヤモンド工業では、40年にわたりコンクリートに関する研究と実績を重ね、その経験から湿式コア抜きを採用しており、熟練の工員による精密な作業が可能です。コアボーリングをご検討の際は、ぜひ当社の湿式ダイヤモンドコア抜きをご利用ください。

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