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あと施工アンカーの施工現地調査

建物の安全を守る、重要な役割を担うあと施工アンカー。設計図書通りに施工されていることを確認するためには、現地調査が不可欠です。

このコラムでは、あと施工アンカーの施工現地調査について、その重要性や調査項目、設計図書資料との連携などについて詳しく解説します。

安全性を確保するための現地調査のポイント

適切な施工がされていないと、あと施工アンカーの性能が発揮できず、建物の安全性が損なわれる恐れもあります。現地調査は、こうした問題を未然に防ぐための重要な役割を担っています。設計図書に示された仕様通りに施工できるかどうか、そしてあと施工アンカーが性能を発揮できる状態であるかを確認するために、さまざまな項目を調査します。

特に重要なのが、母材コンクリートの状態です。強度や健全性はもちろん、曝露環境や供用条件などを考慮した経年劣化も調査対象となります。また、施工条件や作業環境も調査項目に含まれます。安全かつ確実に施工できる環境が整っているかどうかを確認することで、施工不良を防ぎます。

設計図書資料と現地調査を組み合わせることで、より精度の高い調査が可能になります。設計段階で調査されている項目は省略しても構いませんが、現地調査で新たな問題点が発見されることもあるので注意が必要です。

図面等の設計図書資料による調査項目

・コンクリートの基本情報
(竣工年、部材名、コンクリートの種類や配合、鉄筋の有無、形状・寸法など)

・コンクリート構造物の用途や役割

・コンクリート構造物の使用状況

・コンクリート構造物の周辺環境

・あと施工アンカーの種類、直径、数量

・あと施工アンカーの設置位置
(へりあき、はしあき、アンカーピッチ)

現地調査による調査項目

①母材のコンクリートの健全性の調査(劣化状態・補修歴)

母材のコンクリートの調査では、ひび割れや表面の欠けなどの変化や、凍害・塩害・化学的侵食などによる劣化状態を確認します。

目視調査などで、あと施工アンカーの設置位置にひび割れや表面の欠け、弱い部分などが見つかった場合は、対策方法について検討し、新しい設置位置を選びます。

その後、アンカーの性能を確認し、施工計画に反映させます。ひび割れや表面の欠け、劣化した場所に近接してアンカーを設置する場合や、その場所を修理して設置する場合も、施工計画に反映させます。必要に応じて、打音検査や加力試験を行い、影響を把握します。

施工面に仕上げが施されている場合や、過去に表面を補修した歴史がある場合は、コンクリート表面の仕上げ材や補修材の種類(モルタル・タイル・化粧板など)と厚さを確認します。仕上げ材が調査の妨げになる場合は、それを除去して調査を行います。

②母材のコンクリートの健全性の調査(圧縮強度)

母材のコンクリートの調査で、あと施工アンカーのコンクリートの圧縮強度が低下している可能性がある場合や、圧縮強度が不明な場合には、非破壊試験やコア採取による強度試験などの適切な方法を選び、圧縮強度が設計基準強度以上であることを確認します。

特に、付帯設備のゆるみや崩落などが第三者に影響を及ぼす可能性がある場合には、コア採取による強度試験を行い、圧縮強度を測定する必要があります。

調査の結果、母材のコンクリートの強度が設計基準強度を下回る場合は、設計を見直す必要があります。逆に、設計基準強度を大幅に上回る場合は、穿孔などの施工が可能であることを確認します。

また、コア採取による圧縮強度の調査を行う際には、中性化試験も併せて実施し、耐久性に関する劣化状態を確認することが望ましいです。

③母材コンクリート中の埋設物の調査

母材のコンクリート中の埋設物の調査では、穿孔作業時に障害となる鉄筋や配管などを確認します。埋設物の調査には、通常、鉄筋探査機による非破壊検査が使われます。

また、鉄筋探査機でかぶりを測定し、埋込み長さとの関係を把握しておくことが重要です。鉄筋探査機を使用しない場合は、施工位置の両端や中央部など数箇所をはつり、埋設物の位置を確認する方法もあります。

調査の結果、あと施工アンカーの設置場所に障害となる鉄筋や配管などが見つかった場合は、へりあき、はしあき、アンカーピッチ、埋込み長さの不足などを確認します。設計図書などで示された仕様を満たさない場合は、あと施工アンカーの設計を見直す必要があります。

④あと施工アンカーの施工環境の調査

あと施工アンカー工法の仕様に合った施工機材が使用できること、作業が円滑に行えることを確認します。

⑤あと施工アンカーの施工位置近くの環境

あと施工アンカーは、水や塩害、凍害、化学的侵食を受けない一般的な環境を前提としています。そのため、現地調査でこれらの条件を確認します。

使用中にアンカー部分が劣化しない環境であることを確認し、もし劣化が予想される場合は、対策が必要となります。

照明器具やジェットファンなどの重量物を取り付けるためにあと施工アンカーを使う場合、設計図や現地調査を基に、定められた位置に正しく施工できることを確認します。

まとめ

あと施工アンカーの施工現地調査は、建物の安全性と耐久性を確保するために不可欠です。適切に施工が行われないと、あと施工アンカーの性能が十分に発揮されず、建物の安全性が損なわれる恐れがあります。そのため、施工前にしっかりと現地調査を行い、設計図書に示された仕様通りの施工が可能なのか確認することが重要です。

母材コンクリートの強度や健全性、曝露環境や供用条件を考慮した経年劣化、施工条件や作業環境など、さまざまな項目を調査することで、施工不良を未然に防ぐことができます。また、設計図書と現地調査を組み合わせることで、より精度の高い調査が可能になり、現地で新たに発見された問題にも迅速に対応できるでしょう。

現地調査は、あと施工アンカーの性能を最大限に引き出し、建物の安全性と耐久性を確保するための重要なステップです。確実な現地調査を行い、安心して使用できる建物を提供しましょう。

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