セキュリティゾーンの設置
安全と環境を守るためのセキュリティゾーン
かつて建築資材として広く使用されていたアスベストは、近年その健康被害が明らかになり、除去作業が急務となっています。しかし、アスベスト除去作業は、飛散防止対策が不十分であれば、作業員や周辺住民の健康を害する可能性があります。
そこで、今回はアスベスト除去作業におけるセキュリティゾーンの設置について解説します。セキュリティゾーンとは、飛散防止対策を施した作業区域周辺に設ける区画で、適切な設置は作業員の安全確保と周辺環境への飛散防止に不可欠です。
このコラムでは、セキュリティゾーンの重要性や設置方法、管理方法などを詳しく解説し、安全かつ環境に配慮したアスベスト除去作業の実現に役立てていただければ幸いです。
1,セキュリティゾーンの機能・構成
アスベスト除去作業における負圧隔離養生では、作業員の安全と周辺環境への影響を最小限に抑えるために、セキュリティゾーンと呼ばれる特別なエリアを設けます。セキュリティゾーンは、作業場の入り口に設けられ、作業員や資材の出入りを厳密に管理し、アスベストの飛散を防ぎます。
このゾーンには更衣室、洗身室、前室の3つの部屋があり、それぞれの部屋にはアスベストを封じ込める覆いがあります。更衣室では作業着を区別し、洗身室にはエアシャワーを設置します。
セキュリティゾーンは、作業員の健康被害を防ぎ、周囲の環境へのアスベストの拡散を防止する重要な役割を果たします。これにより、安全かつ環境に配慮した作業が可能になります。
2,セキュリティゾーンを屋外に設置する際の注意事項
アスベスト除去作業では、セキュリティゾーンを屋外に設置することがありますが、これにはいくつかのリスクがあります。
隔離空間を屋外に設置する際、強風の影響を受けます。その結果、前室からの風の吹き込みや押し戻し、また養生シートが外に押し出されてしまいます。最悪の場合、隔離された作業場内のアスベストなどの粉じんが外部に漏れる可能性があります。
同様に、セキュリティゾーンを屋外に設置する際にも、作業場との隔離空間の境界部やセキュリティゾーンの出入り口から、強風が吹き込んだり戻ったりすることがあります。その結果、作業場内のアスベストが外部に拡散される可能性があります。
強風の対策としては、セキュリティゾーンをベニヤ板やシートで囲み、直接風が吹き込まないようにすることが有効でしょう。
さらに、セキュリティゾーンの出入り口に、ファスナー付きのプラスチックシートを取り付けて、内部の気圧を調整する必要があります。
作業開始前や作業中は、外部の風の状況に合わせて、プラスチックシートのファスナーを調整したり、集じん・排気装置の稼働台数を調整したりして、内部の気圧を-2〜5Paに保ちます。
ただし、これらの調整でも隔離空間内の負圧が確保できない場合は、作業を中止します。
また、煙突を解体する際には、特に煙突の頂部付近で風の影響を受けやすいため、沿岸部や山間地など風の強い地域では、隔離シートの外側を垂直ネットで補強するなどの対策が必要です。
台風などの異常気象により一時的に工事を中断する場合は、負圧隔離養生を補強して、万が一破損してもアスベストの粉じんが外部に飛散しないよう、煙突の開口部をしっかりと養生することが重要です。
煙突内のアスベスト除去作業では、最初に煙突下部の作業室内で集じん・排気装置を稼働させて、煙突内の負圧を確保した後に、煙突開口部の養生を取り外します。
煙突内では、上昇気流が生じたり、除去物が一斉に落下して下向きの風が発生したりすることがあります。そこからアスベストなどの粉じんが排出口から押し出されるリスクがあります。
そのため、粉じんの飛散や漏れを防ぐためには、セキュリティゾーンの出入口を含む隔離空間をしっかり密閉することが重要です。
3,セキュリティゾーン外に設置する洗浄設備
作業者が、隔離空間での作業を必要としないアスベスト含有成形板などを扱う場合、セキュリティゾーン内の洗浄設備や更衣室を使うべきではありません。
セキュリティゾーン以外の場所で作業する作業者が、セキュリティゾーン内の施設を利用することで、必要な気密性が失われたり、汚染が広がったりする可能性があります。
そのため、セキュリティゾーン外にも洗眼、洗身、うがいの設備、そして更衣室、洗濯設備などの施設が必要になります。
まとめ
今回は、セキュリティゾーンの設置について解説してきました。
理解しておく必要がある点は以下のとおりです。
・ゾーン内には更衣室、洗身室、前室の3つの部屋がある。
・各部屋には覆いがあり、更衣室では作業着を、洗身室ではエアシャワーを用意する。2,セキュリティゾーンを屋外に設置する際の注意事項
・風対策として、セキュリティゾーンをベニヤ板やシートで覆い、風を遮断する。
・セキュリティゾーンの出入り口に、ファスナー付きのプラスチックシートを取り付けて、内部の気圧を調整する
・粉じんの飛散や漏れを防ぐためには、隔離空間をしっかり密閉する。
3,セキュリティゾーン外に設置する洗浄設備
・隔離空間での作業が不要な建材を扱う作業者は、セキュリティゾーン内の施設を使用しない。
・セキュリティゾーン外にも洗眼、洗身、うがいの設備、更衣室、洗濯設備を設置する。
セキュリティゾーンは、アスベスト除去作業における安全対策の中でも特に重要な役割を果たします。その重要性を理解し、適切な設置と管理を徹底することで、安全かつ環境に配慮した作業を実現しましょう。