集じん・排気装置の設置・作業場の負圧化
集じん・排気装置は、集じん装置と排風機(ファン)で構成されています。
一般的には、目詰まりを防ぐための1次フィルタ、2次フィルタ、そして微細な粒子を取り除くためのHEPAフィルタの3層のフィルターが組み込まれています。
これらの装置は、ろ過された空気を外部に排出することで、作業場内を負圧に保つことができます。
それと同時に、汚染された空気の流出を防ぎ、外部から新鮮な空気を作業場に取り込む役割も果たしています。
負圧とは
隔離された作業場内の空気を排気装置で送り出すことで、内部の空気圧を外部よりも低く保つことを負圧といいます。
フィルターを通してきれいな空気を排出することによって、作業場内に存在するアスベストなどの有害物質が外部へ流出するのを防ぐことができます。
1、設置台数
装置の設置台数は、隔離空間内の空気を1時間に4回以上、入れ替える能力が確保できるように決定します。排気ダクトが長い場合や多くの曲がりがある場合、排気ダクトの材質などによる圧力損失を考慮して、排気能力を設定します。必要な風量が保てるように、装置の数を算出することがポイントです。
隔離空間内の負圧は、通常-2〜-5Paに設定されます。この値を確保するためには、適切な数の集じん・排気装置を設置する必要があります。
作業場の気積(床面積✕高さ)(㎥)/(60分÷4回)
必要台数 ≧ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
集じん・排気装置1台当りの排気能力(㎥/分)
(小数点は切り上げ)
2、設置場所
集じん・排気装置は、負圧隔離された作業場内・壁ライン上に設置する場合と、作業場外に設置する場合があります。
装置を作業場内に設置する場合、動作状況の確認が容易になり、隔離空間内からメンテナンスやフィルタ交換を行えるメリットがあります。また、フィルタを交換する際にも、アスベストが外部に飛散しないという点も利点です。ただし、アスベスト繊維が、装置の本体やキャスターに付着する可能性があるため、外部へ持ち出さないように装置の保護・清掃をしっかりと行う必要があります。
負圧隔離の壁ライン上に装置を設置する場合は、装置本体の先端部(一次フィルタ側)のみを作業場外から隔離空間内に入れて取り付けます。装置は固定されて移動できないため、集じんは吸引口にマニホールド(角丸カバー)を取り付けたビニールダクトを使って行います。
メリットとしては、作業場外から装置のON・OFF操作が可能になり、装置本体にアスベストや粉じんが付着することを防止できます。また、装置の吸込口が作業場内にあるため、メンテナンスやフィルター交換も簡単にできます。ただし、装置下部の狭部から漏洩するのを防ぐためにテープなどで養生する必要があります。
作業場外に設置する場合も、装置の吸引口にビニールダクトを接続して、隔離空間内にダクトを伸ばして集じんします。作業場外に設置する利点は、作業場のスペースを取らないことや、装置を外から操作できること、装置の汚れを抑制できることが挙げられます。ただ、フィルタを交換する場合は、粉塵飛散防止のため隔離作業場内で行う必要があります。
また、装置に接続する吸引用ダクトは、伸ばすほど風量が下がる傾向があるので注意が必要です。
3、設置位置
通常、外部からの新鮮な空気はセキュリティゾーンを通して入れます。集じん・排気装置の場所やダクトの吸引口は、できるだけ対角線上に配置して、気流が作業場全体を通過して装置に吸引されるようにします。
また、マイクロマノメーターの負圧値を重視して、装置を意図的にセキュリティゾーンの近くに配置することがあります。ただこの場合、気流がセキュリティゾーンと装置の間をショートカットしてしまい、作業場全体の負圧が保たれないだけでなく、アスベストを含む粉じんを吸引することができなくなる可能性があります。
そういった事態を防ぐためには、集じん・排気装置を追加設置するか、もしくは吸気ダクトで滞留した空気を吸引する必要があります。
集じんや排気装置の位置が適切かどうかを確認するためには、スモークテスターなどを使用して、セキュリティゾーンの出入り口から集じんや排気装置の吸入口に向かう気流の流れをチェックするとよいでしょう。
4、集じん・排気装置の設置事例
① 作業場に複数の窓がある場合
扉の位置にセキュリティゾーンを設け、扉から最も遠い対角線上の窓に集じんや排気装置を設置する。他の窓は全て閉鎖しておく。
② 窓や扉が一方向にある場合
セキュリティゾーンの設置位置から最も遠い場所に集じんや排気装置を設置し、排気ダクトを使って外部に排気する。
③ 広い作業場で複数の窓がある場合
まず、必要な台数の集じんや排気装置を算出して設置する。設置場所はセキュリティゾーンから最も遠い位置にし、気流の滞留箇所ができないように配置する。負圧が大きい場合は、補助空気取入口を設置すること。
開口部には、逆止弁付きの逆流防止ダンパーを使用するか、開口部より大きなプラスチックシートを使って開口部を覆い、プラスチックシートの上部をテープで留める。補助空気取入口の大きさは、集じんや排気装置を運転させ、作業場内の負圧の状態を確認した上で、必要に応じて調整する。この際、補助空気取入口から粉じんが外部に飛散しないように注意する。
まとめ
今回は、集じん・排気装置の設置及び作業場の負圧化について解説してきました。
注意するべきポイントは以下の3つ
設置台数は、隔離空間内の空気を1時間に4回以上、入れ替える能力を元に算出する。
2,設置場所
負圧隔離された作業場内や壁ライン上に設置する場合と、作業場外に設置する場合がある。
3,設置位置
できるだけセキュリティーゾーンから遠い対角線上に配置して、気流が作業場全体を通過して装置に吸引されるようにする。
集じん・排気装置の設置と作業場負圧化は、労働者の健康を守るだけでなく、企業の社会的責任を果たす上でも重要な取り組みです。関係者全員が協力し、適切な設置、運用、管理を行うことで、安全で快適な作業環境を実現することが可能となります。