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アスベスト除去プロセスにおける注意点1

1. セキュリティゾーンの適切な使用方法

アスベスト除去作業中、休憩や作業終了時には、作業員が保護衣を着たまま作業場から出る場合や、作業で使用した道具や廃棄物を外へ運び出す際には、セキュリティゾーンを適切に使用する必要があります。

① 作業員の入退場時

隔離空間に出入りする際は、出入口のカバーの開閉を最小限に抑えます。特に、中断した作業を再開する際に集じん・排気装置を起動する場合、作業場内が負圧であることを確認してから入室できるように、装置のスイッチは作業場外に設置します。

作業場から退場する際には、前室で高性能真空掃除機を使用して保護衣に付着したアスベストを取り除き、その後保護衣を脱ぎ、専用のプラスチック袋に入れて二重に包みます。この袋は特別管理産業廃棄物として処理します。

さらに、保護シューズカバーを外した後、安全靴にアスベストが付着したまま持ち出さないよう、靴拭きマットで拭くか、高性能真空掃除機で吸い取ります。その後、呼吸用保護具を着けたまま洗身室に移動し、エアシャワー(または温水シャワー)を30秒以上使用して全身を洗い、素肌や衣類、呼吸用保護具に付着したアスベストをしっかりと取り除きます。

その後、更衣室で呼吸用保護具を外します。複数の作業員が同時に退場する際には、それぞれが十分な時間を確保できるような作業計画を立てておくことが重要です。

② アスベストを含む廃棄物の搬出時

アスベスト除去作業で生じた廃石綿等は、作業場内でまず専用袋に密封します。その後、前室に運び、袋の表面に付着しているアスベストを高性能真空掃除機で吸い取るか、濡れ雑巾で拭き取った後、二重目の透明袋に入れて密封します。これを洗身室側の担当者に渡し、洗身室でさらにエアシャワーをかけてから、更衣室を通って保管場所に搬出します。

2. アスベスト含有吹付け材等の湿潤化

除去作業に取りかかる前に、アスベストを含む吹付け材などを薬液で湿潤化します。これにより、粉じんが飛散しにくくなります。通常は、粉じん飛散抑制剤を噴霧して建材を湿らせます。

噴霧を行う際には、除去する建材の量に応じた薬液の使用量を事前に計画し、その計画に基づいて適切な量を使用します。使用する薬液の浸透時間は取扱説明書などで確認し、試しに噴霧を行って浸透状態や内部にどれくらい浸透するかを確認したうえで、作業を開始します。浸透の確認は、含水検知器などを使って行うことも可能です。

除去作業中に、薬液の浸透が不十分で粉じんが増加した場合は、再度湿潤化を行います。また、破砕などの作業中に粉じんが多く発生する場合は、破砕作業と湿潤化作業を同時に行います。必要に応じて、粉じん飛散抑制剤を空中に散布し、浮遊している粉じんの沈降を促進させます。

空中散布を行った場合、空気中のアスベストが再び除去面に付着して固着することがあります。再付着した場合は、スクレーパーやカッターなどを使ってしっかり除去する必要があります。また、除去したアスベストが再付着しないようには、水や界面活性剤を使用して空中散布を行うとよいでしょう。

※クロシドライトやアモサイトなどのアスベストは水をはじく傾向があるため、界面活性剤を使用すると効果的です。

クロシドライト・アモサイトとは

クロシドライトとアモサイトは、どちらもアスベスト(石綿)の一種です。アスベストの種類に関する詳細は下記のコラムを参照下さい。

リンク:【コラム】アスベストの種類について

3. アスベスト含有建材の除去

建材を湿潤化した後に、除去作業を開始します。作業台や足場の上で作業を行う際には、仮設の作業床が平らで安定していることを確認し、無理な姿勢で作業をしないよう注意します。

除去作業でやむを得ず建材に力を加える必要がある場合は、体の姿勢や足元の位置を確認してから行います。特に高所での作業では、必ず墜落制止用器具(安全帯)を使用します。作業場所や体の位置を変えるときには、まず足元の安全を確認してから移動します。

耐火被覆材をディスクグラインダーなどの電動工具で切断する際には、粉じんの発生量が非常に多くなります。そのため、局所集じん装置付きのディスクグラインダーを使用するか、1名が切断を行い、もう1名が高性能真空掃除機で集じんするなど、共同作業で行うのが望ましいです。なお、サンドブラスト機は粉じんの発散量が多く、作業場所を加圧するため、アスベスト除去には使用しない方がよいでしょう。

建材を除去した後は、ワイヤブラシなどの研磨用具を使って、下地に残っている材をこすり落とします。この作業では粉じんの発生量が多いため、粉じん飛散抑制剤を空中に散布し、作業場が負圧状態であることに留意します。また、必要に応じて集じん・排気装置のフィルターを交換します。

除去作業が完了したら、除去面にアスベストが残っていないかを目視で確認し、取り残しがないように確実に除去します。

まとめ

アスベスト除去作業では、適切なセキュリティゾーンの使用、湿潤化の徹底、そして慎重な除去作業が重要です。作業員の安全を確保し、アスベストが外部に飛散しないようにするため、これらの手順を厳守することが求められます。

特に、作業場からの退場や廃棄物の搬出時には、細心の注意を払って作業を行うことが不可欠です。また、アスベスト含有建材の除去作業では、高度な注意力と技術が必要です。これらの手順を確実に実施することで、アスベスト除去作業の安全性と効果を高めることができるでしょう。

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