創意工夫と確かな技術で未来につなげる

アスベスト除去準備における留意ポイント

アスベスト除去作業は非常にデリケートであり、入念な準備が不可欠です。施工主には、安全に作業を進めるための事前調査や計画、そして適切な隔離対策が求められます。

隔離が不十分な状態だと、アスベスト含有吹付け材などからアスベストが作業場外に飛散し、重大な事故を引き起こす可能性があります。そのような事態を防ぐためには、細心の注意を払い、徹底した準備を行うことが重要です。今回は注意が必要なケースに応じた留意ポイントについて解説していきます。

1, 天井仕上材の裏にアスベストが堆積している場合

天井裏の鉄骨部にアスベスト含有吹付け材が施工されている場合、天井仕上材の裏面にアスベストが堆積している可能性があります。このような場合は、負圧隔離養生を行った上で、高性能真空掃除機を使用して清掃しながら天井仕上材を撤去するとよいでしょう。

2,空調設備が稼働している場合

負圧隔離養生を行う場合、建物の空調(ダクトによる空調方式)や換気を停止する必要があります。しかし、建物の改修工事などで本設の空調設備が稼働したまま作業を行うこともあります。

その場合、除去作業中に空調吸込口から他の部屋に汚染空気が拡散する恐れがあります。これを防ぐためには、建物管理者の許可のもと吸込口を密封し、可能であれば作業場エリアの空調を個別に停止させるとよいでしょう。

3,隔離作業によって除去対象建材が破損する危険がある場合

隔離部材を設置する際、足場材などが除去対象建材に接触して破損することがあります。この破損した除去対象建材が外部に落下したまま放置されていた事例もあります。このような場合、アスベストの漏洩を防ぐためにも破損した建材は全て取り除き、高性能真空掃除機を使って徹底的に清掃しなければなりません。

4,設備ダクト・配管などが壁を貫通している場合

防火・防煙区画(外壁・内壁)では、外壁の室内側にアスベスト含有吹付け材が使用されていたり、設備配管やダクトが外部に貫通している箇所に吹き付け材が充填されていたりすることがあります。

使用していない貫通孔であっても、吹き付け材を充填して外部に露出している場合もあります。これは室内側から確認できない場合もあるので、外部側からも確認し、除去作業前に外部側からシートやシーリング材で養生するとよいでしょう。

また、作業場内の外壁、内壁、天井、床を貫通する設備配管やダクトの周囲に隙間がないことを確認しましょう。隙間がある場合は必ず両側から確認し、プラスチックシートで養生するかシーリング材で充填して密閉します。

そして、隔離作業の前に、床層間区画や竪穴区画からの風の流入・流出を確認します。風の出入りがある場合、粉じんが漏えいする恐れがあるため、風の流入・流出を防ぐ措置が必要となります。

5,アスベスト含有吹付け材の下地材の裏側が外部とつながっている場合

アスベスト含有吹付け材を下地材である天井材や内壁下地材と一緒に除去する際には、天井裏や内壁裏が外部とつながっていないかを確認します。もし外部とつながっている場合、天井材や内壁材を外す際にアスベストが外部へ飛散する恐れがあります。除去作業を始める前に、外部へつながる開口部や隙間をしっかりと養生しておきましょう。

6,金属製葺屋根の折板や面戸の周囲に隙間がある場合

折板葺屋根の場合、屋根と外壁の取り合い部分に隙間があることがあります。しかし、内部からはアスベスト含有吹付け材や折板裏に貼り付けられた断熱材があるため、確認できない場合があります。これを確認するには外部側からもしっかり調査を行う必要があります。もし隙間が見つかったのであればアスベストの漏洩を防ぐため、除去作業開始前にシーリング材などで隙間を充填させておく必要があります。

7,隔離シートなどを使用して作業場の下部で水平隔離を行う場合

天井面のアスベスト含有吹付け材を除去した際に、吹付け材が落下してきた重みで隔離シートなどがめくれ、負圧隔離養生の外へアスベストが飛散する可能性があります。除去したアスベスト含有吹付け材が隔離シートの上に落下する恐れがある場合には、隔離シートの下部に足場板などを敷き並べてしっかりと補強しておきましょう。

8,建築物の外部で隔離を行い、外装材に係るアスベスト含有吹付け材を除去する場合

建築物の外部に負圧隔離養生を設置して、アスベスト含有吹付け材を除去する際、除去作業を外部足場の上で行うこともあります。この場合、外部足場の外側に負圧隔離養生を実施するには、以下の方法・条件を満たし、問題に対処する必要があります。

・足場に沿って隙間なく負圧隔離養生を設置。

・第三者への防護設備として、
防炎シート、防音パネル、仮囲いなどを外部足場へ設置。

・ビル風や解体した建材との接触対策。

・解体用工具(ガス溶断設備、ディスクグラインダーなど)
火花による負圧隔離養生の破損防止。

・足場に設置する隔離の組立方法と第三者防護設備の取り付け方法。

・外装材の解体方法、アスベスト含有吹付け材の除去作業方法。

・隔離が風圧や解体材料、解体工具との接触により破損しないようにする補強方法。

・解体材料の集積方法や搬出方法。

・隔離空間を隅々まで十分負圧に維持する方法。

・解体材料や除去材料の湿潤化を徹底するための方法を検討・実施。

9,工場や倉庫などで露出しているアスベスト含有吹付け材の除去作業を行う場合

仕上げ材がなく、アスベスト含有吹付け材が露出している工場や倉庫での除去作業において、作業の障害となるロッカーや机を場外に搬出することや、設備配管などを事前に撤去することがあります。

これらの場合、機材にもアスベストが付着または堆積している可能性があるため、事前に高性能真空掃除機で清掃するか、濡れ雑巾で丁寧にふき取りを行ってから場外に搬出するようにしましょう。

まとめ

アスベスト除去作業における準備段階での注意点を押さえておくことは、安全で効果的な作業を実現するために欠かせません。事前調査を丁寧に行い、綿密な作業計画を立てることで、アスベストの飛散を防ぎ、作業者や周囲の人々の健康を守ることができます。

確実な隔離状態を確保し、万全の準備を整えることが、アスベスト除去作業の成功のポイントとなります。これらをしっかりと理解し、安全な作業環境を維持しましょう。

  • B!