建築工事では、コンクリート構造物に機器や部材を固定するために、あと施工アンカーが用いられます。
このアンカーは、後からコンクリートに穴を開けて設置するもので、建物の耐久性や安全性を支える重要な役割を果たしています。
しかし、複数のアンカーを近くに配置すると、互いの影響が出てくることがあります。これを「群効果」と呼び、強度に影響を与える可能性があります。
このコラムでは、そんな群効果がアンカーの強度にどう関わるか、そして群効果への対処法について、わかりやすく解説します。建築の現場で役立つ知識として、ぜひ参考にしてください。
群効果とは
あと施工アンカーを複数本近くに配置すると、強度が単純に本数分だけ増えるわけではなく、予想に反して低下してしまうことがあります。これが「群効果」です。
群効果は、アンカー同士が近すぎることでコンクリートの破壊面が重なり合い、全体の耐力が低下する現象です。これを無視すると重大な事故につながる恐れがあるため、必ず考慮しなければなりません。
アンカーに力がかかると、アンカー周囲のコンクリートがコーン状(円錐形)に壊れます。
単独のアンカーなら問題ありませんが、隣のアンカーが近いと、このコーン状の壊れ方が互いに重なり、コンクリートが早く壊れてしまいます。その結果、設計通りの耐力が発揮できなくなるのです。
たとえば、4本のアンカーを狭い範囲に配置した場合、単独で使う4本分の耐力を期待しても、実際には2〜3本分程度しか発揮できなかったりするのです。特に引っ張りや横からの力を受けたときに、この影響が顕著に現れます。
群効果は見えない部分で起こるため、設計・施工の段階でしっかり把握しておくことが大切です。十分にアンカー同士の距離を取るだけで、防げる問題でもあります。
引張耐力への影響
引張耐力とは、アンカーが引っ張られる力にどれだけ耐えられるかを示すものです。
群効果が起きると、この耐力が低下するケースがあります。具体的には、アンカー同士の距離(アンカーピッチ)が小さいときに注意が必要です。
基準として、アンカーピッチが有効埋込み長さの2倍にアンカーの直径を加えた値より小さい場合、群効果の発生を考慮します。
これは、コンクリートのコーン状破壊が重なり、効果的な固定面積が減ってしまうからです。
耐力を計算する際は、単にアンカーの本数を掛けるのではなく、重なり部分を除いた有効な面積を使って求めます。
一方、アンカーの金属部分が先に壊れる場合や、コンクリートとの接着面が壊れる場合は、群効果の影響が少なく、単独の耐力に本数を掛けて計算します。
現場では、アンカーの配置を事前に確認し、こうした影響を避けることが大切です。
せん断耐力への影響
せん断耐力は、アンカーが横方向の力(ずらす力)に耐える強さを意味します。
群効果はこの耐力にも影響を与え、特にアンカーピッチがはしあき(端からの距離)の2倍より小さいときに低減を考慮します。
ここでも、コンクリートのコーン状破壊が鍵になります。ピッチが狭いと、壊れる領域が重なり、全体の耐力が落ちるのです。
耐力の計算では、重なりを避けた有効面積を使って評価します。ただし、アンカーの金属部分やコンクリートの支圧(圧縮)で壊れる場合は、群効果の影響が小さく、単独耐力に本数を掛ける方法でも大丈夫です。
構造の細かな規定では、アンカーピッチをアンカー径の5倍以上とするよう定められているため、複合的な壊れ方が起きにくくなっています。これを念頭に置くと、施工の計画がしやすくなるでしょう。
群効果への対策
群効果を防ぐためには、まず配置の計画をしっかり立てることが重要です。
アンカーピッチを基準値以上に確保するだけで、多くの問題を回避できます。たとえば、引張の場合、有効埋込み長さの2倍プラス直径、せん断の場合、はしあきの2倍を目安にします。
はしあきについては下記の記事を参考にしてください。
https://tsuzuki-dx.com/column/important-points-for-post-installed-anchors-basics-of-edge-and-edge-clearance/
耐力を計算する際には、破壊モードを考えて有効面積を調整してください。コーン状破壊が予想されるなら、重なりを除いた面積で評価します。
また、現場のコンクリート強度やアンカーの種類を事前にテストし、信頼できる値を基に設計しましょう。さらに、専門のソフトウェアやガイドラインを活用すると便利です。
万一ピッチが狭くなる場合は、アンカーの本数を減らしたり、補強材を追加したりする方法もあります。こうした対策で、安全で長持ちする構造物を実現できます。
まとめ
あと施工アンカーは建物を支える重要な部材ですが、複数のアンカーを近接して配置するときには「群効果」が必ず付きまといます。
この影響を正しく理解して対応することで、設計通りの性能を確実に発揮させることができます。
以下が今回のまとめになります。
- 群効果とは、アンカー同士が近すぎることでコンクリートの破壊面が重なり、全体の耐力が低下する現象である。
- 引張耐力では、アンカーピッチが「有効埋込み長さの2倍+アンカー直径」より小さい場合に群効果を考慮する。
- せん断耐力では、アンカーピッチが「はしあきの2倍」より小さい場合に影響を評価すること。
- コーン状破壊が支配的になるケースでは、重なり合う面積を除いた有効投影面積で耐力を計算する。
- 最も簡単で確実な対策は、基準以上のピッチを確保すること。やむを得ず狭くなる場合は、計算や試験でしっかり検証する。
群効果は一見すると見落としがちなポイントですが、ここに気を配るだけで構造物の安全性は大きく向上します。
都築ダイヤモンド工業では、これらの知識を活かして、より信頼性の高い施工を実現してまいります。