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集じん・排気装置を除く使用機材の用意

建築現場での安全管理は、労働者の健康と安全を確保するための重要な要素です。特に、石綿(アスベスト)を含む建材の除去作業では、粉じんの飛散を防ぐための適切な機材の使用が求められます。本コラムでは、集じん・排気装置を除く使用機材の準備について詳しく解説します。

エアレススプレイヤ、散水設備、高性能真空掃除機などの機材を正しく選び、効果的に使用することで、作業環境を清潔に保ち、アスベストのリスクを最小限に抑える方法をお伝えします。安全で効率的な作業を実現するためのポイントを押さえていきましょう。

1.脚立、可搬作業台、各種足場、高所作業車

階の高さに応じて、脚立、可搬作業台、移動式足場(キャスター付きステージなど)、ローリングタワー、枠組足場などの固定式足場、または高所作業車の使用が必要になる場合があります。

脚立の単独使用は極力避け、可搬式作業台を使うか、脚立足場として安全衛生規則に従った使用を行うようにします。除去作業は上向きの姿勢で行うため、できるだけ足元が安定し広い作業床を用意することが基本です。

枠組足場を利用して全面ステージを組み立てることもあります。可搬式作業台、移動式足場やローリングタワーの場合は、床面の隔離シートの上に設置することも可能ですが、隔離シートを破損しないように脚部の保護などの工夫が必要です。

ローリングタワーや固定式足場を設置する際には、作業床を隔離する方法があります。特に全面的にステージを組み立てる場合、隔離範囲を縮小するためにはステージの作業床の上部を隔離する方法が効果的です。

設備機器や資材が残っている工場や倉庫、または除去作業中でも使用を止められない通路などでは、足場を組み立てられないこともあります。その際には、除去対象のアスベスト含有吹付け材の下部や、残された資材や使用中のスペースの上部に吊足場を設置し、吊足場の上部を作業場として隔離する方法を検討するとよいでしょう。

仮設機材を隔離空間内で使用する場合、仮設機材にアスベストが付着する可能性があります。隔離空間内では作業終了後に清掃を入念に行い、外部への拡散や第三者への曝露を防止しましょう。その際は作業性や安全性に影響がない程度に事前に養生を行うことが望ましいです。

また、足場の組み立てや解体作業にあたっては、足場の一部変更やブレースなどの部材の取り外しを行う場合も、足場組み立て等作業従事者特別教育を受講していることが必要となります。

2,除去用工具

アスベスト含有吹付け材やアスベスト含有保温材を掻き落として除去する場合、主に以下の手工具や手持ち電動工具が使用されています。

・ヘラ、皮スキ、ケレン棒、カッターナイフ、ワイヤブラシ、ディスクカップブラシ、電動スクレーパーなど

アスベスト含有吹付け材の除去には、超高圧水を使うウォータージェット工法が使用されることもあります。

また、アスベスト含有断熱材や耐火被覆材を掻き落とし、切断または破砕して除去する場合、以下の手工具や手持ち電動工具が使用されています。

・ヘラ、皮スキ、ケレン棒、ワイヤブラシ、バール、とび口、大ハンマー、ハンマー斫用ハンマードリル、電動スクレーパー、ディスクグラインダー

3,粉じん飛散抑制剤吹付け機械
(エアレススプレイヤ)

エアレススプレイヤは、圧力をかけて薬液を押し出す構造を持ち、アスベスト含有吹付け材の除去時に除去面や作業場内空間に粉じん飛散抑制剤を散布するのに使用されています。また、除去後の下地面や廃アスベストを詰めるプラスチック袋、隔離シートや封じ込め面にアスベスト繊維を固定するために、粉じん飛散防止処理剤を散布する際にも使用されています。さらに、水の噴霧にも用いられます。

エアレススプレイヤにはダイヤフラム式とプランジャー式の2種類があります。エアレススプレイヤをアスベスト繊維に直接使用すると、エアの圧力でアスベストが飛散してしまうため、エア圧力が直に伝わらないように間接的に薬液を散布するようにしましょう。

エアレススプレイヤとは


もともとは塗装用機械で、塗料を高圧ポンプで加圧し、ホースを介して塗装ガンに取り付けたエアレスノズルから噴射させることで塗装します。

4,散水設備

散水設備には、水を使用するシャワーやスプレーなど、散水に適したノズルを備えたものがあります。ノズルを回転させて広範囲に散水するスプリンクラーや、さらに広範囲な作業場での散水には散水車を使用することがあります。散水を行う際には多量の水を使用するため、適切な排水処理が必要になります。

5,高性能真空掃除機

アスベスト除去作業中や作業終了時の清掃には、高性能真空掃除機が用いられています。高性能真空掃除機のHEPAフィルターなどのフィルター交換や掃除機内のダスト回収作業は、アスベスト飛散防止のためにも隔離空間内で行わなければなりません。

まとめ

アスベスト含有建材の除去作業において、適切な機材の準備は、安全で効率的な作業を実現するための鍵です。エアレススプレイヤや散水設備、高性能真空掃除機などの機材を正しく使用することで、粉じんの飛散を防ぎ、労働者の健康を守ることができます。

また、事前の計画と準備を怠らないことで、作業の効率化と安全性の向上が図れます。建築現場での安全管理を徹底し、アスベスト除去作業を確実に遂行するための参考にしていただければ幸いです。安全第一で、労働者と環境を守りながら、質の高い建築作業を目指していきましょう。

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