コンクリート構造物は外見がきれいでも、内部にさまざまな問題を抱えていることがあります。
鉄筋の位置ずれ、空洞、ひび割れ、剥離……など。これらは目視では発見できず、放置すれば大きな事故につながりかねません。
そんなとき頼りになるのが「非破壊検査」です。特に電磁波を使うレーダー探査は、コンクリートの中をレントゲン撮影のように可視化できる優れた手法として、近年注目を集めています。
今回は、建築現場や維持管理の現場で「レーダー探査がどうしても必要になる」具体的なケースを4つ挙げて、詳しく解説します。
レーダー探査が活躍するケース1
鉄筋のかぶり厚さや位置の確認
コンクリートの中にある鉄筋は、錆びから守るために「かぶり厚さ」と呼ばれるコンクリートの厚みを十分に確保する必要があります。
かぶり厚さとは、鉄筋の表面からコンクリートの外側(表面)までの距離のことです。この厚みが不足すると、空気中の水分や塩分が鉄筋に到達しやすくなり、錆びが発生してしまいます。
錆びた鉄筋は膨張し、コンクリートを内側から押し割ってしまうため、建物の耐久性が大きく損なわれるのです。
新築工事の竣工検査では、設計図通りにかぶり厚さが確保されているかを確認することが非常に重要です。柱や梁など、主要な部分でかぶりが不足していると、将来的に深刻な劣化を引き起こすリスクが高まります。
レーダー探査は、コンクリートの表面をスキャンするだけで、内部の鉄筋がどの深さにあるかをミリ単位で測定できます。
特に高速道路の高架橋、海辺の建物、トンネルなど、塩害や湿気の影響を受けやすい構造物では、かぶり厚さの確認が欠かせません。
また、築年数が経過した建物では、施工当時の技術や管理の精度が低かったこともあり、図面と実際のかぶり厚さが異なるケースが少なくありません。
耐震補強やリノベーションを行う前に、レーダー探査で正確な鉄筋位置とかぶり厚さを把握しておけば、補強材を安全に取り付けられたり、新たな穴あけ位置を適切に決めたりできます。
このように、レーダー探査は「見えない鉄筋のかぶり」を確実にチェックできるため、新築から既存建物まで、幅広い場面で信頼されています。
レーダー探査が活躍するケース2
打継ぎ・施工不良の調査
コンクリートは一度に打ち終えられない場合、打継ぎ部分が生じます。ここは施工不良が起こりやすく、空洞やコールドジョイント(冷たい継ぎ目)と呼ばれる施工不良が発生しやすい弱点です。
表面にジャンカ(骨材の露出)や砂すじが見られるとき、その奥にどれだけの空洞が続いているかを知ることは、補修範囲を決める上で極めて重要です。
従来は「怪しい部分をはつってみる」しか方法がありませんでしたが、これでは余計な傷を付け、補修費用も膨らみます。
レーダー探査なら、はつる前に空洞の大きさと深さを正確に把握できるため、必要な部分だけをピンポイントで補修できます。
さらに、プレキャスト部材を現場で接合するPC構造物や、大型ダムの施工でも打継ぎ部分の調査にレーダー探査が活躍しています。
施工直後の品質確認から、数年後の定期点検まで、幅広い場面で欠かせない存在となっています。
レーダー探査が活躍するケース3
既存建物の用途変更や耐震診断
築30年、40年を超える建物は、用途変更や耐震補強のニーズが高まっています。
例を上げると、オフィスを住宅に変える、学校を福祉施設に改修する、倉庫を店舗にするなど、このようなケースでは、既存の鉄筋配置を正確に把握することが工事の成否を分けます。
特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物では、図面が紛失していたり、現況と大きく異なっていたりすることが多いのが実情です。
レーダー探査を使えば、壁やスラブ(屋根板)の内部を広範囲にスキャンし、鉄筋の本数・間隔・深さを短時間で記録できます。
これにより、補強用のあと施工アンカーや炭素繊維シートを、既存鉄筋を傷つけずに安全に配置できるようになります。
また、ビルのオーナーチェンジや売買の際に行われるデューデリジェンス(資産調査)でも、レーダー探査による配筋調査が求められるケースが増えています。
正確なデータがあることで、物件価値の適正な評価が可能になるため、このような需要が増加しています。
レーダー探査が活躍するケース4
劣化診断と補修計画の立案
コンクリート構造物は経年とともに確実に劣化します。塩害地域では塩化物イオンの浸透、寒冷地では凍害、都市部では中性化やアルカリ骨材反応など、劣化の種類は多岐にわたります。
補修や補強を行う前に「どこまで劣化が進んでいるか」を正確に把握することが、効果的かつ経済的な対策の第一歩です。
レーダー探査は、ひび割れが鉄筋まで達しているか、コンクリートと鉄筋の間に剥離が生じていないかを非破壊で確認できます。
また、内部の水分分布まで把握できる機種もあり、塩害や凍害の進行度合いを定量的に評価するのにも役立っています。
定期点検で毎年同じ箇所をスキャンすれば、劣化のスピードを数値で追跡でき、最適な補修時期を見極められます。
例えば「あと5年は補修不要」「来年中に補強が必要」といった判断が、データに基づいて可能になるのです。これにより、予算の無駄遣いを防ぎながら、構造物を長寿命化できます。
まとめ
コンクリート構造物の安全と長寿命を守るためには、内部の状態を正確に知ることが何よりも大切です。
レーダー探査は、壊さずに内部を「見える化」できる強力な非破壊検査の一つであり、次のような場面で特に力を発揮します。
- 鉄筋のかぶり厚さや位置の正確な把握(新築検査・耐震診断)
- 打継ぎ部分や施工不良による空洞・不連続の調査(品質管理・補修範囲決定)
- 既存建物のリノベーションや売買時の配筋調査(安全施工・資産評価)
- 劣化状況の診断と補修時期・方法の決定(維持管理・長寿命化)
レーダー探査を適切なタイミングで活用することで、無駄な工事費用を抑えながら、構造物の安全性を確実に高められます。
これからの建築現場や維持管理では、ますます欠かせない技術となるでしょう。皆様のプロジェクトに、ぜひ積極的に取り入れてみてください。