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あと施工アンカー鉄筋干渉時の正しい再穿孔マニュアル

あと施工アンカーは、既存のコンクリート構造物に設備や機器を取り付ける際に欠かせない工法です。

しかし、穿孔時に内部の鉄筋に当たってしまい干渉が発生することがあります。

このような場合、無理に穿孔を進めると、アンカーの強度が落ちてしまったり、取り付ける機器が予定通りの位置に収まらなくなったり、最悪の場合、構造物自体にダメージを与えてしまう恐れがあります。

今回は「鉄筋干渉」が起きたときの再穿孔について、誰にでもわかりやすく手順と注意点を解説します。

丁寧な対処により、工事の品質を保ち、トラブルを未然に防ぐことが可能になりますので、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

鉄筋干渉が発生したら行うべきこと

あと施工アンカーの穿孔作業中に、ドリルが内部の鉄筋に当たってしまうことがあります。

このような干渉が起きた場合、すぐに近くで別の穴を開け直すのは避けています。

安易に再穿孔すると、取り付ける設備や機器の位置がずれてしまったり、アンカー本来の強度が十分に発揮できなくなったりする恐れがあるからです。

正しい対応としては、まず設計の段階に戻って考え直すことが大切です。

アンカーを取り付ける位置や本数を変更する必要があるかどうかを、関係者同士でしっかり話し合います。

具体的には、発注者様(工事をお願いした方)、設計者、施工担当者、そしてアンカー工事の専門技術者が協議します。

この話し合いでは、アンカー部分の強度や安全性をもう一度丁寧に確認し、変更後の計画が問題ないかをチェックします。

最後に、発注者様から正式な承認をいただいてから、再穿孔の位置や本数、具体的な方法を決定します。

こういった手順を踏むことで、工事全体の安全性を守り、後々のトラブルを防止しています。

金属系アンカーの再穿孔方法

金属系アンカーとは、拡張式や打ち込み式など、機械的にコンクリートに固定されるタイプのアンカーです。この場合の再穿孔方法は、主に2つの選択肢があります。

一番のおすすめは、①旧孔(前に開けた穴)から十分に離れた別の場所に新しく穴を開ける方法です。

目安として、旧孔からアンカーの穿孔深さ以上の距離を空けると、旧孔の影響を受けずに済みます。この方法なら、アンカーの性能がほとんど変わらず、最も安全で確実です。

もう一つの方法は、②旧孔の同じ位置に少し斜め(5°以内を目安)に穴を開け直すことです。鉄筋に当たった部分より下で、必要な深さをしっかり確保します。

ただし、斜め穴にするとアンカーの拡張部分が鉄筋に近づきすぎるリスクがあるため、できるだけ避けたほうが良いでしょう。

どうしても②の方法を選ぶ場合は、穴が計画より深くなる分、アンカーの長さや種類を見直し、施工計画を変更して発注者様の承認を必ずいただいています。

接着系アンカーの再穿孔方法

接着系アンカーとは、専用の接着剤(樹脂)でコンクリートに固着させるタイプのアンカーです。再穿孔の選択肢は3つあります。

まず基本となるのは、①旧孔から十分に離れた別位置に新しく穴を開ける方法です。

金属系と同じく、旧孔から穿孔深さ以上の距離を取れば、影響を最小限に抑えられます。

次に、②鉄筋を避けて元の位置のすぐ近くに穴を開ける方法です。

鉄筋に当たった深さに、必要な深さを足した分だけ深く穴を開けます。

そして、③旧孔の位置に斜め(15°以内を目安)に穴を開け直し、鉄筋より下で必要な深さを確保する方法です。

②と③を選ぶと、穴が計画より深くなるため、アンカー筋の埋め込み長さや接着剤の量を増やす必要があります。

量が足りないとしっかり固まらず強度が出ませんので、必ず計算し直し、材料を追加で準備してください。もちろん、施工計画の変更と発注者様の承認も忘れずに行います。

旧孔の補修と記録の重要性

再穿孔が終わった後も、前に開けたままの旧孔(空いた穴)の扱いを決して軽視してはいけません。

穴が開いたままですと、そこから雨水や湿気が入り込み、コンクリート内部の鉄筋が錆びたり、構造物全体の耐久性が低下したりする原因になってしまいます。

補修の際は、無収縮モルタルやエポキシ樹脂モルタルなど、防水性と耐久性に優れた材料を選んで、穴の中をしっかり詰めてください。

外観もできるだけ周囲と揃えるよう心がけると、より丁寧な仕上がりになります。

たとえ適切に補修した場合でも、旧孔の位置や深さ、周辺の環境によっては、そこを起点として小さなひび割れが発生する可能性があります。

そのため、旧孔がいくつあったか、どこにあったか、どれくらいの深さだったか、どんな材料で補修したかを、必ず詳細に記録しています。

施工記録と管理記録をきちんと残しておくことで、後々の点検や万一のトラブル対応の際に大きな助けになります。

まとめ

あと施工アンカーの鉄筋干渉は、正しい手順を守れば決して大きな問題にはなりません。安全で確実な工事のために、以下のポイントを実践しています。

  • 干渉が発生したら、関係者で協議し、性能照査と発注者様に承認を得る
  • 金属系アンカーは別位置穿孔を原則とし、斜め穿孔は慎重に行う
  • 接着系アンカーは深さ増加を考慮し、埋込み長さと接着剤量を調整する
  • 旧孔は防水性・耐久性を考慮した材料で丁寧に補修する
  • 旧孔の位置や補修内容を含め、施工記録を詳細に残す

これらを実践することで、アンカー性能を維持し、構造物の長期的な安全を守ることにつながります。

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