建設現場や解体作業において、石綿や有害物質の飛散を防ぐには、隔離作業が欠かせません。しかし、隔離空間が確実に密閉されているかを確認するのは、単純なことではありません。このような場面で必要になるのが、漏れを確認する機器類です。
今回は、漏れを確認する機器の種類や特徴について、分かりやすく解説していきます。現場での安全性を高めるためにも参考にしてもらえると幸いです。
1.パーティクルカウンター
漏れ確認で欠かせない機器の一つが、パーティクルカウンターです。空気中に含まれるパーティクル(埃や微粒子)を計数する測定器で、微粒子からの光の散乱を利用して粒子の大きさや数を計測する機器です。
パーティクルカウンターは、半導体工場のクリーンルームや製薬工場、食品工場、病院の手術室など、汚染源の特定が求められる現場で広く使用されています。特に、クリーンルームの清浄度を示すISO14644-1に基づく基準では、0.1µmの粒子数に応じてISOクラス1〜9に分類され、厳密に管理されています。
隔離作業では、集じん・排気装置の排気口内部で粒子数を測定することで、HEPAフィルタの劣化や装置の隙間からの漏えいを検知することが可能です。漏えいが確認された場合、速やかに原因を特定して対処することで、有害物質の飛散を未然に防ぐことができます。
また、パーティクルカウンターによる測定は、作業中や装置の移動時、フィルタ交換時など必要に応じて随時行うことが重要です。特にリアルタイムでの連続測定を行うことで、異常を早期に発見し対応する体制を整えやすくなります。
2.粉じん相対濃度計(デジタル粉じん計)
粉じん相対濃度計(デジタル粉じん計)は、空気中の「繊維状粒子」と「非繊維状粒子」の両方を測定可能で、集じん・排気装置の排気口からの漏えいを把握するために使用されています。
使い方としては、解体工事の影響がない場所で測定した値と比較して、集じん・排気装置の排気口で測定した値が多い場合は、漏えいが発生している可能性があります。
さらに、作業開始前の測定値と比較して粉じん濃度が増加している場合には、集じん・排気装置やフィルタに異常があると判断できます。このように、粉じん相対濃度計は漏えいリスクの早期発見と対策において重要な役割を果たします。
異常を検出した際には、作業を中断して原因を調査・補修することで、有害物質の飛散防止に寄与できます。また、吸引ポンプ内蔵型の粉じん相対濃度計を使用すれば、集じん・排気装置の排気口内部での測定も簡易に行えます。
3.繊維状粒子自動測定器(リアルタイムファイバーモニター)
繊維状粒子自動測定器(リアルタイムファイバーモニター)は、従来の位相差顕微鏡法(光の回折や干渉を利用して、標本に明暗のコントラストを付けて観察する手法)とは異なる原理で動作し、リアルタイムで総繊維数濃度を連続的に測定・記録することが可能です。
特に、石綿除去作業場や集じん・排気装置の排気口付近での測定において、その利便性が発揮されます。位相差顕微鏡法ではリアルタイム測定が不可能なため、漏えいの即時検知が困難です。
繊維状粒子自動測定器は即時に漏えいを感知し、設定した管理目標値を超えた場合には警報音や表示による通知が行われます。
また、作業開始前の一般環境大気中の総繊維数と比較して、排気口内部の総繊維数が増加している場合には、集じん・排気装置からの漏えいを把握することが可能です。
4.マイクロマノメーター(精密微差圧計)
マイクロマノメーター(精密微差圧計)は、集じん・排気装置の稼働状況を確認し、隔離空間内の負圧状態が適切に維持されているかを測定するための装置です。
負圧状態は、一般的に-2〜-5Paの範囲で管理されており、この数値を正確に測定することが、作業の安全性と効率性を確保する上で重要です。そのため、マイクロマノメーターは0.1Pa単位まで表示可能な高精度なタイプの選定が必要です。
設置場所については直射日光を避け、温度変化の少ない場所に設置することで、測定精度を保つことができます。
また、気流の影響を受けにくい環境を選び、測定用チューブの開口端と機器本体が同じ高さになるように設置する必要があります。
5.スモークテスター
スモークテスターは、隔離空間内で負圧環境が維持されているかを確認し、スモーク(煙)で空気の流れを可視化するための装置です。負圧環境が正しく機能しているかを視覚的に把握することで、隔離空間の養生状態や集じん・排気装置の性能を迅速に評価することができます。
使用するスモークテスターには、白煙の発生量が多く、効率的に空気の流れを確認できる必要があります。装置や環境への影響を最小限に抑えるため、塩化第二スズを使用していない製品を選択します。そうすることで、集じん・排気装置の腐食リスクを軽減し、長期的な信頼性を確保できます。
さらに、広範囲の隔離空間における漏えい確認が必要な場合には、多量の白煙を発生させるスモークマシンを活用することがあります。細かな漏えい箇所も容易に特定でき、隔離空間の安全性をより高い水準で維持することが可能です。
使用する際には取扱説明書に従った操作や点検を行い、定期的にメーカーで校正を受けた機器を使用することが重要です。注意事項を厳守することで、漏えいリスクを最小限に抑え、隔離作業の安全性を確保することができます。
まとめ
漏えい確認機器は、隔離空間での安全性を確保するために欠かせない存在です。パーティクルカウンターや粉じん相対濃度計、繊維状粒子自動測定器、マイクロマノメーター、そしてスモークテスターといった各種機器は、それぞれ異なる特徴と役割を持ちながら、連携して作業現場の安全性を支えています。
これらの機器を適切に選定し、正しく使用することで、漏えいリスクを早期に発見し、迅速に対応することが可能になります。
漏えい確認機器の活用は、作業者の安全を守るだけでなく、周辺環境への影響を最小限に抑えるための基本です。正しい機器選定と運用を通じて、安心で効率的な作業環境を実現して参ります。