建築物の解体や改修工事に携わる際、石綿(アスベスト)含有建材の事前調査は安全確保と法令遵守の観点から欠かせません。
特にレベル1やレベル2の吹付け材・保温材に加え、レベル3の石綿含有建材についても徹底した確認を重要視しています。
このレベル3の建材は、建築物のさまざまな部位に広く使われており、表面からは判断しにくい場合も少なくありません。知らずに作業を進めると粉じんの飛散やばく露のリスクが生じやすいため、建築業者として丁寧に知識を整理し、適切な対応を実践しています。
今回は、レベル3の石綿含有建材の概要から工事時のポイントまでをわかりやすく解説します。
レベル3の石綿含有建材とは
レベル3の石綿含有建材とは、レベル1に該当する石綿含有吹付け材や、レベル2に該当する保温材・耐火被覆材・断熱材以外の、すべての石綿含有建材を指します。主に成形板などの製品形態で、建築物の内装・外装・設備部分に使用されています。
輸入された石綿の大半がこのレベル3の建材に活用されていた点も特徴です。たとえば1995年の石綿輸入量は約18万トンで、そのうち93%がレベル3の原料として使われていました。
内訳を見ると、平板スレートに7.5万トン(42%)、スレートに3.7万トン(21%)、押出成形セメント板に3.3万トン(18%)などとなっており、製品中の石綿含有量が5〜10%程度であることを踏まえると、実際の建材使用量は輸入量の10倍以上と推計されます。
また、各メーカーで多種多様な製品が開発・流通していたため、同じような建材でも名称が異なり、データベースを参考にしながら確認する必要があります。
主なレベル3の石綿含有建材の例
レベル3の石綿含有建材は種類がたくさんあります。どれも建築現場でよく見かけるものばかりなので、わかりやすく分類して紹介します。
まず、板状の建材(成形板)が一番多く使われています。代表的なものは次のとおりです。
- 平板スレート
- スレート(波型スレートも含む)
- 押出成形セメント板
- パルプセメント板
- 石綿セメントサイディング板
これらは外壁や屋根、間仕切りなどに使われることが多いです。
次に、以下の少し幅広い板やシート類もレベル3に含まれます。
- けい酸カルシウム板第1種
- ロックウール吸音天井板
- せっこうボード
- パーライト板
- 壁紙
- ビニル床タイル
- ビニルシート
- ソフト幅木
- ルーフィング
- 石綿発泡体
さらに、以下の設備まわりの部品にも石綿が入っているものがあります。
- ユニットバスの壁
- フリーアクセスフロア
- 空調ダクトや給水管のパッキン
- 排水管の耐火二重管
- ポンプ軸部のグランドパッキン
- ブレーキパッド
これらの建材は、大きなビルや工場だけでなく、普通の戸建て住宅の天井・壁・床・設備部分にもかなり広く使われています。
見た目だけでは石綿が入っているかどうかがわかりにくいものも多いので、現場では部位ごとにチェックリストを作って一つひとつ丁寧に確認しています。
このように各建材の特徴をしっかり把握しておくことで、解体や改修工事のときに「ここに石綿が入っているかもしれない」という見落としを防ぎ、作業の安全性を高めています。
レベル3建材の特徴と複雑な使用実態
レベル3の石綿含有建材の大きな特徴は、表面観察だけでは石綿の含有がわかりにくい点です。たとえば ※ 施釉(せゆう)したけい酸カルシウム板や、突き板を取り付けたボード類は、外見からは判断しにくいため注意が必要です。
施釉(せゆう)とは
表面にガラス質のコーティングを施し、汚れや水漏れを防ぎ、光沢や色ツヤを出す工程のこと。
また、単独で使用されるだけでなく、天井の下地にせっこうボードを貼り、その上からロックウール吸音板を仕上げるような複合建材も多く流通しています。
鍋板製間仕切り壁の心材としてけい酸カルシウム板第1種を使い、その間にロックウールが充填された製品なども同様です。
さらに、不定形の接着剤、パテ、混和剤、塗り壁材料、塗材など、添加剤や増量剤として石綿が使われる場合もあります。
これらは施工現場で他の材料と任意に混合して使用されていたため、使用状況や頻度が作業者ごとに異なり、書面調査や現地調査だけでは完全に特定することが極めて困難です。
このような複雑さから、石綿含有の可能性を否定できない建材も少なくありません。
解体・改修工事における対応と注意点
レベル3の石綿含有建材も、石綿則や大気汚染防止法、廃棄物処理法の対象となります。
一部の地方公共団体では大気汚染防止の観点から解体・改修工事の届け出を義務付けているため、事前に各自治体の規則を丁寧に確認しています。
除去工事では、破砕しにくい塗材などについて、労働基準監督署や地方公共団体から工法や飛散防止対策の詳細な確認を要請されるケースがあります。空調ダクトのパッキンや配管保温材なども同様に、発じんの程度に応じた工事方法を重視しています。
特にレベル3の場合、石綿則第3条第4項に基づき、分析調査を行わずに「みなし石綿含有」として扱う対応が一般的です。これにより、迅速かつ安全に工事を進められます。
一方で、戸建て住宅にも広く使用されているため、所有者や利用者が存在を知らずに日曜大工などで切断・穴あけ作業を行うと、粉じんの飛散によるばく露リスクが生じます。
軽微な工事も含め、的確な使用状況調査を実施し、含有が確認された場合は飛散防止措置を徹底するとともに、発生する廃棄物を確実な方法で処理する必要があります。
まとめ
レベル3の石綿含有建材は、解体・改修工事の安全性を左右する重要な要素です。建築現場で適切に対応するため、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
・レベル3とは、レベル1・2に該当しない石綿含有建材で、成形板などの製品である
・輸入石綿の93%がレベル3の原料として使用、多様なメーカー製品が流通していた
・表面からはわかりにくい、複合建材や添加剤としての使用も多く特定が極めて困難
・石綿則などの法令対象で「みなし石綿含有」として対応できる
・戸建て住宅にも広く使われており、ばく露や廃棄物処理時の拡散リスクを招く
・軽微な工事も含め、事前調査から適正処理まで一貫した管理が必要
これらの要点を踏まえ、事前調査から工事完了まで丁寧に管理することで、作業者の健康を守り、周辺環境への影響を最小限に抑えることが可能となります。