石綿(アスベスト)は、過去に多くの建材に使われてきましたが、健康への影響が大きいため現在は厳しく規制されています。
解体工事やリフォームを行う工事業者にとって、石綿が含まれているかどうかを正確に判断することは、作業員の安全を守り、法令を遵守するためにも非常に大切です。すべての建材を一つずつ分析するのは時間も費用もかかります。
そこで、建材の種類や施工時期、目視・書面情報などを活用した、効率的で確実な判断の方法を知っておくことが重要です。本コラムでは、現場ですぐに役立つ実践的なポイントをわかりやすくお伝えします。
吹付け材(レベル1)の判断ポイント
吹付け材は、石綿(アスベスト)が含まれている可能性が特に高い建材の一つです。代表的な「吹付け石綿」は、見た目や質感で石綿が入っていると判断できる場合もありますが、ロックウールなど他の吹付け材は外見だけでは判断がとても難しいのが実情です。
古い建物の場合、「いつ建てられたか」という施工時期だけで「石綿は入っていない」と決めてしまうのは危険です。石綿が使用されていた時期に建てられた建物では、たとえ記録が残っていなくても石綿が使われている可能性があります。
過去の資料に「石綿あり」と書かれている場合を除き、乾式工法・湿式工法のどちらであっても、基本的には現場からサンプルを採取して専門の分析機関で調べる必要があります。
レベル1に分類される吹付け材はリスクが高いため、まずは施工時期や工法をしっかり確認し、不明な点があれば迷わず分析を行う。これが安全を守るための基本的な判断の流れになります。
保温材・断熱材(レベル2)の判断ポイント
保温材や断熱材などのレベル2建材も、吹付け材と同じくらい注意が必要なカテゴリです。これらの材料は、建物の配管やエアコン設備、機械類の周囲に多く使われており、見た目だけでは石綿が入っているかどうかを判断しにくいのが特徴です。
レベル1と同様に、設計図や書類に石綿の記載がなくても、実際には石綿が含まれているケースが少なくありません。特に築年数が古い建物では、図面に載っていない材料が使われていることがよくあります。
現場では、実際に目で見て触れて、材料の形状・色・設置されている場所を一つひとつ丁寧に確認しながら進めていくことが大切です。
わからない部分が出てきたら、レベル1と同じようにサンプル分析を検討しましょう。見た目で判断せずに「念のため確認する」という慎重な姿勢が、作業員の健康を守る鍵となります。
成形板などの建材(レベル3)の裏面調査
成形板類(レベル3)は、他のレベルに比べて判断しやすい建材です。板の裏面や側面に書かれている情報を確認することで、石綿が含まれているかどうかを調べられます。主に確認する情報は次の通りです。
- メーカー名
- 不燃認定番号
- JIS番号
- 商品名やロット番号
- 製造工場名
- aマークなど
これらの情報を「石綿(アスベスト)含有建材データベース」やメーカーの資料と照らし合わせます。
必要に応じてメーカーから「石綿が入っていない」という証明書をもらうことで、明確に「なし」と判断できるケースも多くあります。この裏面調査は、レベル3建材を効率的に調べる実践的な方法として広く使われています。
現場調査を効率的に進める実務的なコツ
実際の調査では、事前に作った建材一覧表を活用すると作業が格段にスムーズになります。設計図には載っていない建材がたくさんある可能性があるため、図面と現場の実際の材料を一つずつ照らし合わせながら確認することが大切です。
建材の形状(板状・筒状・吹付け状など)や施工されている場所も丁寧にチェックします。調査した箇所は写真や図面に記録しておき、作業終了時に見落としがないか最終確認する習慣をつけると安心です。
また、レベル1・2・3の建材については、石綿が含まれていると「みなす」判断をすることも認められています。これは「安全を優先して、石綿が入っているものとして扱う」という考え方です。
「みなす」の詳細については、こちらの記事で解説しています。
発注者の希望や、施工する場所・数量に応じてこの「みなす」判断を活用すれば、調査にかかる負担を抑えつつ、安全性をしっかり確保できます。
まとめ
石綿含有の有無を確実に見極めるためには、建材のレベルごとに適した判断方法を理解し、現場で着実に実行することが重要です。
- レベル1(吹付け材)は目視に加えて分析を基本とし、施工時期だけで判断しない
- レベル2(保温材・断熱材)もレベル1と同様に慎重に確認する
- レベル3(成形板など)は裏面情報を活用したデータベース照合が有効
- 書面調査と現地確認を組み合わせ、記録を残しながら見落としを防ぐ
- 必要に応じて「みなす」判断を活用する
これらの基準を日常の業務に取り入れることで、作業員の安全を守り、工事全体の信頼性も高めることができます。石綿対策は地道な取り組みですが、日々の積み重ねが大きな安心につながります。