施工区画の設定
アスベスト除去作業の準備において、施工区画の設定はとても重要です。施工区画があることで安全性が確保されて、作業効率も向上します。さらに周囲への影響を最小限に抑えることができます。作業の進行をスムーズにするためにも、施工区画の設定は不可欠なものとなっています。
今回はアスベスト除去作業における、施工区画の設定について詳しく解説していきます。
1)施工区画の目的
施工区画を設置する目的は、第三者のばく露や作業場への立ち入りを完全に防ぎ、作業を安全に進めるための環境を確保することです。この施工区画を設定することにより、第三者の安全確保はもちろん、作業者が安心して作業に取り組めるだけでなく、作業者の休憩場所や必要な機材の保管場所、廃棄物の処理場所なども確保することができるのです。
例えばアスベストを含有する吹き付け材を、切断などで取り除く際には、除去を実施する作業場を他の場所から隔離する必要があります。ただし、作業場を隔離したからといって、アスベスト繊維によるばく露を完全に防ぐことはできない点に注意してください。
昼間にオフィスビルや工場、学校の教室などを使用しながら段階的に作業を進める場合、作業場を隔離した外側に施工区画と呼ばれるエリアを設置します。そして、作業場と第三者の間に物理的な仕切りを設けて、アスベストの流出を最低限に抑える必要があります。
2)施工区画の計画
施工区画を計画する際には、第三者の数や通行量、作業場と第三者が立ち入る場所との距離、除去作業の進行状況や期間に応じて、施工区画の範囲や使用する資材、組み立て方などを計画します。
この計画作業では、建築主や建物の管理者、テナント、周辺住民など近隣の関係者のニーズにも十分に考慮する必要があります。
3)施工区画の組立て方法
施工区画の組み立てには、様々な方法があります。建築工事では状況に応じて仮設の仕切り方法を工夫することも必要です。
具体的な方法としては、既製のバリケードフェンスを利用したり、単管や型枠支保工用鋼管を下地にして、ブルーシートや不透明な防炎シート、またはベニヤを張る方法があります。
また、仮囲いには万能鋼板を使用することもできます。さらに、軽量鉄骨を組み立て、本設と同等のプラスターボードを張る方法もあります。
【参考】施工区画の実施事例
テナントが日中居室を使用する場所で行う除去作業の施工区画例
作業が数週間にわたって断続的に行われる場合、施工エリアとテナントの使用エリアを区切り、資機材のストックヤードや保管場所を確保するとよいでしょう。床から天井までの高さで、本設の仕切り壁と同様の仮設の仕切り壁を設置してエリアを区画します。除去作業を行う場所は、狭い範囲を専用の負圧隔離施設で保護しましょう。施工エリアへの出入りは、仮設の仕切り壁に設けられた仮設扉を利用してください。工事が行われていない期間は、扉を施錠して閉鎖する必要があります。
駐車場を使用しながら行う除去作業の施工区画例
例えば、駐車場ビルの各階を2つに分けて施工エリアとします。それぞれの施工エリアで順番に除去作業を進め、他のエリアでは駐車が可能な状態を保ちます。施工エリア内には、負圧隔離養生された作業場を設けます。車道は昇降用の2車線のうち、1車線を閉鎖し、もう1車線を交互に使用します。その使用中の車道の上には吊り足場を設置し、その上で負圧隔離養生を行いながら除去作業を行います。施工エリアは単管に防炎シートまたはメッシュシートを張り、その内側にプラスチックシートなどを使用して、作業場を負圧隔離養生します。
学校の教室で行う除去作業の場合の廊下と作業場の間の小規模の施工区画例
学校の教室内のアスベスト含有吹付け材の囲い込み工事では、教室ごとに順番に作業を進めながら移動します。この工事中、アスベスト粉塵が教室へ侵入するのを防止するために、作業場の出入口となる教室の出入口(引き違い扉)の外側に施工エリアを設け、仮設の出入口を二重に設置して、作業場と廊下を区切ります。また、学校施設などでアスベスト対策工事を行う際には、教職員、保護者、児童生徒などに対して工事の内容などを十分に説明し、児童生徒の安全を最優先に考え、在校時に作業を行わないなどの対策を講じる必要があります。
まとめ
アスベスト除去作業の準備において、施工区画の設定は重要です。
理解しておくポイントは以下の3つ
・施工区画を設置する目的は、第三者の安全を確保し、作業環境を安全に整えること。
・施工区画の設定により、第三者の安全だけでなく、作業者の安心や必要な施設も確保できる。
2)施工区画の計画
・施工区画の計画では、作業場と周囲の距離や作業の進行状況などを考慮する。
・区画の範囲や使用する資材を決めて、建物の管理者やテナント、近隣住民の意見も考慮する。
3)施工区画の組立て方法
・施工区画の組み立てには、いくつかの方法がある。
・バリケードフェンスやブルーシート、軽量鉄骨などを使って仮設の仕切りをするなどの工夫が必要。
施工区画の安全性について正しく理解し、作業者や第三者の安全・安心に寄与できるように心がけましょう。