かつて「奇跡の鉱物」と称され、建築現場で広く使われてきた石綿(アスベスト)。その優れた耐熱性や耐久性から、屋根や壁、断熱材に欠かせない素材として重宝されました。
しかし、今は深刻な健康被害の代名詞に。肺がんや中皮腫といった命に関わる病を引き起こすことが明らかになり、建築に携わる人々や古い建物に住む人にとって、知っておくべき重大なリスクが浮き彫りになっています。
今回は、石綿の基礎知識から健康への影響、現場での対策まで、わかりやすくお伝えします。正しい知識を手にして、リスクから身を守る第一歩を踏み出しましょう!
そもそも石綿とは何か?
石綿(アスベスト)とは、天然の岩石から採れる繊維状の鉱物です。髪の毛よりもはるかに細く、顕微鏡でやっと見えるほどの微細な繊維で、熱に強く、腐食しにくい特性を持っています。
この「魔法のような素材」は、かつて建築現場で大活躍しました。屋根材や壁材、断熱材、パイプのコーティングなど、古い建物では今もその姿を見かけることがあります。
なぜこんなにも重宝されたのか? 答えは簡単で、コストが安く、どんな過酷な環境にも耐え抜く性能があったからなのです。
しかし、この「優等生」には裏の顔がありました。石綿の繊維はあまりにも細かく、空気中に舞いやすいのです。世界保健機関(WHO)では、長さと幅の比率が3:1以上で、幅が3マイクロメートル未満の繊維を特に危険視しています。
こうした微細な繊維は、鼻や喉を通り抜け、肺の奥深くまで到達してしまうのです。そして1970年代に入ると、石綿が引き起こす健康被害が次々と報告され始めました。肺に刺さった繊維が長年居座り、取り除くのが難しいことが問題の核心でした。
やがて、日本では2006年に石綿含有建材の使用が全面禁止に。かつての「奇跡の素材」は、今、厳しい規制の対象となっているのです。
それでも、過去に建てられた多くの建物には石綿が残っています。解体やリフォームの現場では、知らずに繊維を吸い込むリスクが潜んでいるのが現実です。石綿の特性と歴史を知ることは、危険から身を守る第一歩といえるでしょう。
石綿が引き起こす健康被害とは?
石綿(アスベスト)の恐ろしさは、吸い込んだ微細な繊維が肺の奥に居座り、深刻な病気を引き起こすことにあります。
最も代表的な病気は肺がん、そして中皮腫(ちゅうひしゅ)です。中皮腫は肺や胸を覆う膜にできる悪性腫瘍で、90%以上が石綿と関連しているとされています。さらに、石綿肺と呼ばれる肺の線維化も重大な健康被害の一つです。
こうした病気の原因は、極めて細い石綿繊維が肺の奥深く、肺胞と呼ばれる空気のやり取りをする場所まで到達することにあります。髪の毛の100分の1ほどの細さの繊維は、鼻や喉の防御をすり抜けて、肺に刺さってしまうのです。
驚くべきことに、石綿の影響はすぐには現れません。吸い込んでから20〜40年という長い潜伏期間を経て発症することが多く、過去の暴露が今になって命を脅かすケースも珍しくありません。
繊維が肺に留まると、体の防御細胞(マクロファージ)が取り除こうとしますが、長い繊維は処理しきれず、細胞が壊れて炎症が起きます。この炎症が長年続き、活性酸素や線維増殖因子が放出されることで、肺がんや中皮腫の引き金になると考えられています。
石綿の健康影響についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
現場の作業員だけでなく、解体現場の粉じんを吸った近隣住民への「二次暴露」による被害も報告されています。古い建物の改修や解体では、こうしたリスクが身近に潜んでいるのです。石綿の危険性を知ることは、命を守るための第一歩といえるでしょう。
現場でアスベスト対策として何をすべきか
石綿のリスクを減らすためには、建築現場での対策が欠かせません。日本では2006年から石綿含有建材の使用が禁止され、解体や改修の際には事前調査が法律で義務づけられています。
古い建物、特に1970〜80年代に建てられたものは、屋根材や壁材に石綿が含まれている可能性が高いのです。もし石綿の含有が疑われる場合、専門の調査員に依頼し、石綿の有無を確認することが重要です。
これは目視だけで石綿を判断するのは難しく、判別には専門知識が必要であることが理由となります。
現場の作業では、石綿の繊維が空気中に舞わないよう細心の注意が求められます。その対策として、繊維の飛散を抑える「湿式作業」が推奨されています。
「湿式作業」は、建材を水で湿らせることで粉塵の飛散を抑える方法です。また、作業員は必ず防塵マスクや保護服を着用し、専用の換気装置を使うことで吸い込みを防ぎましょう。
一般の方に知ってほしいのは、DIYでのリフォームの危険性です。古い壁や天井を自分で壊すと、知らずに石綿を吸い込むリスクがあります。「ちょっとした工事だから」と安易に手を出す前に、専門業者に相談するのが賢明です。
さらに、作業後は現場の清掃を徹底し、粉じんが周囲に広がらないよう配慮が必要です。石綿の飛散は、作業員だけでなく近隣住民にも影響を及ぼす可能性があるのです。
アスベスト問題の今後と私たちができること
石綿(アスベスト)の問題は、過去の遺産として今も私たちの身近に存在しています。現在、日本では厳しい規制が敷かれていますが、規制される以前の古い建物には石綿が潜んでおり、解体や改修のたびにリスクをもたらします。
また、開発途上国では依然として石綿が使われている地域もあり、国際的には課題が残っているのです。その一方で、良い面もあります。安全な代替素材の開発が進み、環境に優しい建築技術が広がりつつあります。日本でも、被害者支援や啓発活動が強化され、知識の共有が進んでいるのです。
私たちにできることは、まず、古い建物に住む場合やリフォームの際には、石綿有無の調査を専門家に依頼することです。建築現場で働く方は、石綿の防護装備と法令遵守を徹底することも大切です。
また、身近な人に石綿の危険性を伝えることも、意識を広げる一歩になります。正しい情報を持ち、行動することで、リスクを減らせるのです。未来のために、安全で健康な環境を築いていきましょう!
まとめ
石綿の危険性は、知らずに吸い込むことで命を脅かす深刻な問題です。肺がんや中皮腫といった病気のリスク、建築現場での飛散の危険性を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
古い建物の解体やリフォームでは、専門家による調査と防護措置が欠かせません。一人ひとりが正しい知識を持ち、行動することで、石綿のリスクから身を守れます。
建物の改修・解体を実施するにあたっては、発注者による工事発注前の事前調査を実施することで、さまさまざまなリスクを回避することができます。
私達、都築ダイヤモンド工業株式会社では、アスベストの疑いがあるコア抜きも対応できます。是非とも私達に、お気軽にご相談ください。