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アスベスト除去だけが選択肢じゃない?封じ込め・囲い込みの活用法

アスベストが使用されている建物の対策といえば、「除去」が一般的だと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、建築基準法では一定の条件を満たせば、「封じ込め」や「囲い込み」といった工法を選択することも可能です。

実際に、建物の構造や使用状況によっては、必ずしも除去が最適とは限りません。封じ込め・囲い込み工法を活用することで、建物の使用を継続しながらアスベストの飛散を防ぐことができるケースもあります。

今回は、封じ込め・囲い込み工法とは具体的にどのようなものなのでしょうか? それぞれの工法の特徴や適用条件、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。

 

アスベストの封じ込め・囲い込みとは?

アスベスト対策といえば「除去」が一般的ですが、一定の条件下では「封じ込め」や「囲い込み」による対策も可能です。これらの工法はアスベストを撤去せずに飛散を防ぐ方法であり、特に増改築時に採用されることがあります。

封じ込め工法とは?

封じ込め工法は、吹付けアスベストの表面や内部を固めて飛散を防ぐ方法です。主に以下の2種類があります。

・表面固化処理:専用の薬剤を吹付け、表面を固める方法。
・内部浸透処理:薬剤を内部まで浸透させ、アスベスト繊維を固定する方法。

これらは施工前に付着力試験を行い、十分な強度が確認できた場合に限り施工可能となります。

囲い込み工法とは?

囲い込み工法は、アスベストが露出している部分を粉じんを透過しない材料で覆い、飛散を防ぐ方法です。施工方法には、ボードやパネルで覆う方法や、気密性の高いシートで密閉する方法などがあります。

この方法では、アスベスト自体には直接手を加えないため、施工時のリスクは低いものの、経年劣化による破損リスクがあるため定期的な点検が必要です。

 

法的な規制と適用条件

アスベストの封じ込め・囲い込みは、建築基準法や国土交通省の基準に従って実施する必要があります。

建築基準法の適用条件

建築基準法では、増改築時のアスベスト対策について以下のように定められています。

・増改築部分の床面積が延床面積の1/2を超える場合
 → アスベストの除去が義務化

・1/2以下の場合
 → 封じ込め・囲い込みによる対応が可能

施工時の基準と安全対策

国土交通省の告示(平成18年10月1日 告示第1173号)では、封じ込め・囲い込み工法の使用材料や施工方法、維持管理の基準が定められています。

また、施工時にはアスベスト粉じんの飛散を防ぐため、除去と同様に「レベル1」の管理措置が必要です。主な対策として、以下が求められます。

・作業エリアの隔離(シートで封じる)
・負圧換気装置の設置(粉じんの拡散防止)
・作業員の保護具着用(防護服・マスク)
・適切な廃棄物処理(飛散防止の徹底)

封じ込め・囲い込みは除去よりも施工後の管理が必要となるため、場合によってはトータルコストが高くなる点も考慮が必要です。

 

封じ込め・囲い込み工法の
メリットとデメリット

封じ込め・囲い込み工法は、アスベストの飛散を防ぐ手段ですが、それぞれに下記の表のような特長があります。

封じ込め・囲い込み工法の特徴

メリット デメリット
建物の構造を維持しながらアスベスト飛散を防げる 除去よりもトータルコストが高くなる場合がある
一時的な工事で済むため短期間で対応可能 施工時に粉じん発生のリスクがあるため、レベル1の対策が必要
建物の使用を継続しながら対策が可能 長期的には維持管理のコストが発生する

封じ込め工法の特長

メリット:解体作業が不要で、工期が短縮できる。
デメリット:劣化が進んでいる場合は適用不可。定期点検が必要。

囲い込み工法の特長

メリット:施工時の飛散リスクが低い。工事が比較的容易。
デメリット:将来の改修時に除去が必要になる可能性がある。


短期的にはコストを抑えられますが、長期的な維持管理費も考慮が必要です。

 

どのような場合に
封じ込め・囲い込みを選ぶべきか?

封じ込め・囲い込み工法は、アスベスト除去が難しい場合の代替手段です。

封じ込め工法は、吹付けアスベストの状態が良好で、付着力試験に合格している場合に適しています。施工期間が短く、施設を使用しながらの工事にも向いています。

一方、囲い込み工法は、除去の予算や工期が確保できない場合や、一時的な対策として利用される傾向にあります。

ただし、どちらの工法も共通して言えることは、施工後の維持管理が必要であり、長期的なコストも考慮した上で選ぶべきでしょう。

 

封じ込め・囲い込み工法の注意点

封じ込め・囲い込みを行う際は、施工時と施工後の管理が重要です。

まず、施工時にはアスベストの飛散を防ぐため、隔離や負圧換気などの管理措置を徹底する必要があります。

封じ込め工法では付着力試験を実施し、施工の適否を判断することが不可欠です。
囲い込み工法では、気密性や耐久性の高い材料を使用することが求められます。

施工後も定期的な点検を行い、劣化や破損があれば早急に補修し、安全な状態を維持する必要があります。また、改修や用途変更時には、アスベストの管理状況を確認し、適切な対応を検討することが大切です。

封じ込め・囲い込みは、施工後の管理があってこそ効果を発揮するため、それらを含めた長期的な視点が重要です。

 

まとめ

封じ込め・囲い込み工法は、アスベストの飛散を防ぐ有効な手段ですが、適用には慎重な判断が必要です。

封じ込め工法は吹付けアスベストの状態が良好である場合に適し、囲い込み工法は除去が難しい場合の一時的な対策として活用できます。

しかし、どちらの工法も施工時の管理が求められ、施工後も定期的な点検や補修が必須です。

長期的なコストや維持管理の負担を考慮し、最適な方法を選択することが重要です。アスベスト対策は、安全性を最優先に行い、不安がある場合は専門業者に相談することを推奨します。

 

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