接着系アンカー
接着系アンカーは、建築や土木の分野で幅広く使用されているあと施工アンカーの一種です。
接着系アンカーは、事前に穿孔しているコンクリート孔に接着剤を注入し、その中にアンカー筋を設置することで高い固着力を得ることが特徴です。接着系アンカーは、その多様な種類や施工方法により、さまざまな現場のニーズに応える柔軟性があります。
今回は、接着系アンカーの基本的な仕組みや種類、施工方法について詳しく解説していきます。
金属系アンカーとの違い
接着系アンカーと金属系アンカーでは、固定の手法や仕組みが異なります。
金属系アンカーは、孔を穿孔し、金属製のアンカーボルトを挿入してアンカーを固定します。
一方、接着系アンカーは、穿孔された孔に接着剤を注入し、その接着力によってアンカーを固定します。
金属系アンカーは、金属同士の摩擦力や力学的なかみ合い作用で固定していますが、接着系アンカーは接着剤の接着する力によって固定されています。
上記のようにそれぞれ特性が異なるため、使用する材料や施工条件に合ったアンカーを使い分ける必要があります。
接着系アンカーの分類と特徴
接着系アンカーは、あと施工アンカーを固着する方法や製品の形状などによって、方式が分類されています。
1)カプセル方式
カプセル方式では、接着剤がカプセルに封入された状態になっており、そのカプセルを破壊することで接着剤を流入させる方式です。
カプセル方式の接着系アンカーは、回転・打撃型(回転型と回転打撃型)と打込み型に分類されます。
回転型は、アンカーボルトを孔に挿入した後、ドリルなどを使用してアンカーボルトを回転させ、周囲の素材に固定する方法です。この方式は施工が容易で効率的な固定が可能であり、建築や構造工学、DIYプロジェクトなど様々な分野で広く利用されています。
回転打撃型は、ハンマードリルを用いてアンカーボルトを打撃しながら回転させ、周囲の素材に固定させる方法です。回転と打撃を組み合わせることでより強固な固定が実現し、耐久性・安全性が向上しています。
打ち込み型は、固定する際にハンマーや打撃工具を使用して直接打ち込むことによって固定します。
アンカーを固定する際には、まず母材を穿孔し、次にアンカーを孔に挿入します。その後、アンカーの先端に取り付けられたカプセルをハンマーで叩くことによって、カプセルが破裂し、接着剤が孔内に流れ出ます。その後、接着剤が硬化することでアンカーが母材に固定されます。
2)注入方式
注入方式には、接着剤の主剤と硬化剤を現場で混合して使用する現場調合型と、接着剤が梱包されたカートリッジ型に分けられます。
現場調合型では、作業現場で必要な量の接着剤と硬化剤を混合し、その後、孔に注入します。
一方、カートリッジ型は、あらかじめ接着剤がカートリッジに注入されており、特殊なノズルを使って孔に注入します。
接着系アンカーの分類と使用材料の重要性
接着系アンカーは、ガラス、フィルム、紙(不織布)を素材とした容器に接着剤が封入されており、その容器の種類によって分類されています。
接着系アンカーの接着剤には、ポリエステル系樹脂やエポキシ系樹脂などの有機材料やセメント系の無機材料が使われています。必要な物理的性質は、試験成績表などで確認できます。ただし、有機材料と無機材料の物理的性質を同じ試験方法で評価するのは、性質が異なるため適切ではありません。
また、母材のコンクリート中に接着系アンカーが埋め込まれるため、アルカリ性の耐性が重要となります。一部の有機材料では、アルカリ性の環境下で加水分解が起こり、物理的性質が損なわれることがあるため、耐アルカリ性の性能が必要です。
接着系アンカーのためのアンカー筋の特性と使用方法
接着系アンカーに使用するアンカー筋は、一部がねじ加工されたものや端部の形状が加工されたものが使われます。通常、アンカー筋の先端部の形状は、接着系アンカーの固着方法に応じて選択するのが一般的です。
回転型および回転打撃型の場合は、接着剤やカプセルを固着時に粉砕・混合するため、先端部が加工されたものが使用されます。一方、打込み型や注入方式には、平先寸切りボルトや平先寸切りの異形棒鋼がよく用いられます。
まとめ
今回は、接着系アンカーについて解説していきました。
接着系アンカーには、大きく分けて2種類でカプセル方式と注入方式があります。
カプセル方式は回転・打撃型(回転型と回転打撃型)と打込み型に分類されています。
注入方式は、現場調合型とカートリッジ型に分けられます。
接着系アンカーは、種類や特性に応じて容器に封入されており、接着剤の種類や物理的性質については試験成績表で確認できます。
アルカリ性の環境下では加水分解が起こるため、アルカリ性への耐性や施工手順の遵守が重要です。
接着系アンカーは、それぞれに合った方法を選ぶことで安定した性能を確保できます。施工前には必ず仕様や手順を確認し、信頼性の高い製品や方式を選びましょう。