一戸建て住宅の解体や改修工事を行う際、石綿(アスベスト)含有建材の存在は見逃せない重要なポイントです。
過去に広く使用された石綿は、その優れた耐火性や耐久性から建築資材として重宝されていましたが、健康へのリスクが明らかになり、現在では厳格な規制が設けられています。
特に一戸建て住宅では、特定の建材に石綿が含まれている可能性があり、調査と対応が求められます。
今回は、一戸建て住宅で使用される石綿含有建材の種類と特徴、調査のポイント、さらには法令に基づく対応方法について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
一戸建て住宅で使用される石綿含有建材
一戸建て住宅でよく見られる石綿含有建材は、主にレベル3に分類されるものです。
レベル3建材とは、石綿が含まれているものの、飛散性が比較的低い資材を指します。
代表的なものには、せっこうボード、ビニル床タイル、スレート板などがあります。
これらの建材は、平屋や2階建ての住宅の内外装、特に水回り(浴室、キッチン、洗面所など)に多く使用されています。
せっこうボードは、壁や天井の内装材として広く採用されており、過去には石綿が強度や耐火性を高めるために添加されることがありました。
ビニル床タイルは、耐久性や防水性が求められるキッチンや浴室の床材として使用され、特に1970年代から1990年代初頭に建てられた住宅で石綿含有の可能性が高いです。
スレート板は、屋根や外壁に用いられ、耐候性や耐火性が特徴です。これらの建材は、解体や改修時に慎重に取り扱う必要があります。
レベル3建材の「みなし含有」の考え方
一戸建て住宅でよく使用されているレベル3建材については、石綿の含有が不明な場合、「みなし含有」として扱うことが認められています。
これは、石綿の有無が判断できない場合に、分析をせず石綿が含まれているとみなして対応する方法です。この判断は、施工場所、建材の数量、発注者の意向に基づいて行われます。
「みなし含有」を採用するメリットは、分析にかかる時間や費用を抑えられる点にあります。特に、建材の数量が少ない場合や、分析コストが対策費用を上回る場合には有効です。
一方、石綿の含有可能性が低い場合や、建材を再資源化する場合には、分析を行い含有の有無を明確にするとよいでしょう。
これは、分析によって石綿の所在をはっきりさせることで、飛散防止対策や廃棄物処理のコストを削減できる可能性があるからです。
石綿含有建材の調査方法とポイント
一戸建て住宅においても石綿含有建材の調査は、解体や改修工事の安全性を確保するために不可欠です。調査は書面調査と現地調査を組み合わせて行います。
書面調査では、設計図書や建材一覧を確認し、現場で使用されている建材との整合性を検証します。
ただし、設計図書に記載のない建材が使用されている場合や、図面と異なる形状(ボード状、円筒状など)の建材が使われている場合もあるため、注意が必要です。
現地調査では、調査箇所の見落としを防ぐため、写真や図面を用いて記録を残します。調査終了時には、漏れがないかを再度確認することが重要です。
国土交通省の「建築物石綿含有建材調査マニュアル」によると、1970年代から1980年代に製造されたせっこうボードやスレート板は、石綿含有の可能性が高いとされています。
このように正しい情報を認識して、効率的かつ正確な調査を行います。
建設リサイクル法と石綿含有建材への対応
建設リサイクル法では、解体工事における分別解体の手順が定められています。
2010年の改正施行規則により、木材と一体となったせっこうボードなどの建設資材は、木材の分別前に取り外すことが義務付けられました。
これは、石綿含有建材が混在する場合に、確実に処理を実行するための規定です。
レベル3建材は飛散性が低いものの、解体や切断時に石綿繊維が飛散するリスクがあります。そのため、湿式作業や局所排気装置の使用など、飛散防止対策を徹底する必要があります。
また、石綿含有廃棄物は特別管理産業廃棄物として処理することが定められており、環境への影響を最小限に抑えることを目的としています。
まとめ
一戸建て住宅における石綿含有建材の管理は、解体や改修工事の安全性を確保するために欠かせません。以下に、本コラムの要点をまとめます。
せっこうボード、ビニル床タイル、スレート板などが一戸建て住宅の内外装や水回りに使用される。
みなし含有の判断
石綿の含有が不明な場合「みなし含有」で対応するか、分析で明確にするかを状況に応じて選択する。
調査の重要性
書面調査と現地調査を組み合わせ、設計図書と現場の整合性を確認。記録を徹底して漏れを防ぐ。
法令に基づく対応
建設リサイクル法に従い、飛散防止対策や分別解体、廃棄物処理を適切に行う。
上記のポイントを踏まえ、正確な知識をもとに対応を行うことで、安全な施工環境を構築していきます。