石綿(アスベスト)を含む建材が残る建築物の調査では、現地に入る前の準備が結果を左右します。その第一段階が設計図書などを基にした書面調査です。既存の情報をできるだけ集め、現地調査の計画を立てることで、見落としを防ぎ、作業の効率を高めることにつながります。
書面を確認せずに現地に入ってから図面を見ているのでは、時間も手間もかかりやすく、確認が漏れる恐れもあります。ですので書面調査は省略せずに丁寧に進めましょう。
このコラムでは、調査の目的に応じて発注者様と確認を重ね、必要な知識を踏まえ情報を整理していく流れを、順を追って解説していきます。
書面調査の重要性と必要な知識
石綿調査の最初のステップは、設計図書の調査、いわゆる書面調査から始まります。この段階では、すでに手元にある情報や関係者から得られる資料を活用して、現地で何を重点的に確認すべきかをはっきりさせておきます。
書面調査をしっかり行うことで、調査対象の建築物の構造や使用されている建材の傾向が理解できるので、現地での石綿含有建材の確認漏れを防ぐことができます。
また、調査を進めるうえで、建築一般の知識、建築設備と防火材料の特徴、石綿含有建材の種類や使われ方について、一通り頭に入れておきます。そうすることで、図面の情報がより把握しやすくなるのです。
そして、書面調査だけで終えることはせず、石綿の使用状況を網羅的に把握するためにも、現地調査につなげることが基本になります。
ただ例外として、2006年9月1日以降に着工したことが明らかな建築物については、製造等が禁止されていることから現地調査を省略できる場合もあります。
発注者様に確認すべき事項
書面調査を始める前に、発注者様との確認を入念に行います。まず、設計図書や過去の調査記録、除去などの作業履歴の有無を尋ね、必要な資料を揃えてもらいます。
次に、調査の目的も確認しておきます。解体のための事前調査なのか、耐震改修や設備更新を含む改修工事のためのものなのか、建物の維持管理を目的としたものか、あるいは資産除去債務の計上のための調査なのか、目的によって対象範囲や深さも変わってくるため、発注者様と十分に相談していきます。
建物が使用中の状態で、改修や解体の事前調査を行う場合は、天井懐内などの調査で粉じん飛散抑制剤の噴霧が必要になったり、仕上げ材の裏を確認するために破壊を伴う調査が必要になったりすることがあります。
その可否や箇所、方法、さらに調査後の復旧方法についても、事前に発注者様と打ち合わせを重ねておきます。調査の日時や期間、ルートの設定、報告書に記載する内容についても前もって確認し、後からの食い違いがないように努めています。
情報の入手と図面の読取り
発注者様から得られる情報に加え、図面以外の資料や関係者へのヒアリングなども行っておきます。できるだけ多くの情報を集めるほど、現地調査が正確になるからです。その後、集めた情報をもとに、建築物の基礎情報を把握します。
次に、建築確認申請書などの建築図面を確認し、建物の規模や構造、年代といった基本的な内容を整理します。そして、特記仕様書や仕上げ表などから建材の種類や仕様を想定し、仮特定していきます。外部の情報も活用して、石綿含有の可能性を推測します。
注意しないといけないのは、図面に書かれた内容が現状と完全に一致するとは限らないため、あくまで仮の判断として扱い、現地で確認する前提で進めることです。図面の読み取りを丁寧に行っておくと、見落としやすい箇所をあらかじめ洗い出せるようになります。
情報を整理して現地調査に
書面調査で得た情報は、現地調査を円滑に進めるための書類にまとめます。動線計画を立て、調査する順番や重点箇所を明確にしておきます。また、書面から読み取った建材をリストアップし、現地で照合しやすい形に整えておきます。
情報整理をすることで、現地での作業時間が短縮され、確認漏れも減らせます。設計図書や竣工図は石綿の使用状況をすべて網羅しているわけではなく、改修や増築によって現状と食い違うことも少なくありません。そのため、書面調査の結果をもって調査を終了するのではなく、現地調査へつなげることが大切です。
情報を整理する段階で、どの部分を重点的に見るべきかをはっきりさせておくことが、安全で確実な調査につながるのです。
まとめ
石綿書面調査は、現地調査を効果的に進めるための重要な基盤です。既存の情報を最大限に活用し、発注者様との確認を丁寧に重ねることで、把握漏れを防ぎ、信頼できる調査結果を導き出せます。
以下が今回のまとめです。
- 書面調査は現地調査の効率と精度を高めるために必要な第一段階である
- 発注者には設計図書や調査目的、対象範囲、破壊調査の可否などを確認する
- 図面やヒアリングから建材や石綿含有の可能性を読み取り、仮特定しておく
- 得た情報をリスト化し動線計画を立て、現地調査につなげる
これらの基本を踏まえ、一つひとつの確認を丁寧に進めていくことが、安全を守り、関係者の皆様からの信頼を積み重ねることにつながると実感しています。